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第1話 夢のはじまり…
夜が明けると、『ノワール』と呼ばれる町では夜中に起こった地震が話題になった。
ここは、周りを海に囲まれた島『シエル島』
時期によって四季も楽しめるのどかで平和な島。
地震の話題が収まらない中で別の話題も出始めていた。
それは、『また人が何者かによって拐われた』という事。
そして、この町だけではなく広範囲の場所で多発していた。
「また、誘拐事件…」
カフェで新聞を眺めながらそう呟く女の子。
女の子は、兎のような姿で、白い体毛と透き通るような青い瞳が特徴の女の子。
カウンター席でのんびりと新聞を読んではいるが、実はこのお店のお手伝いをしている店員さんだ。
のんびりしている女の子の様子に気がついたのか、奥からもう一人女性が出てきた。
「ミーちゃん?そろそろ開店の時間だから、ね?」
「はーい!」
兎の女の子よりちょっと年上に見える女性。
おしとやかで優しそうな印象のお姉さん。ピンク色の体毛で猫の姿をしている。
優しく注意され、新聞を畳み椅子から立ち上がる兎の女の子。
そして、お店の外に出ていき、お店の開店を知らせる看板をお店の前にセットした。
お店の名前は『クローバー』
町の外れにある小さなカフェだ。
「うーん…!いい天気〜!」
日の光を浴びながら両手を上げて伸びをする女の子。
すると、後ろから「あ、あの…」と声が聞こえてきた。
振り返るとそこには小さな男の子がいた。
男の子は、黒と灰色の毛並みで狐の姿をしている。赤いバンダナと左の赤い瞳と右の青い瞳のオッドアイ、9つに分かれた尻尾が特徴だ。
…そう、僕は昨晩、研究所の実験で装置へ入れられていた九尾の狐だ。
「いらっしゃいませ!君一人かな?」
店員さんかな
兎の女の子が僕に優しく話しかけてくる。
「すいません、僕お客じゃなくて…。道を教えて欲しいんです…」
僕はお金なんて持っているわけもなく、申し訳なくなってしまう。
だから道を教えてもらったらすぐに行こうと思っていた。
でも、兎の女の子はそんな事は気にしない様子で、僕の手を取ると、どんどん店内へ引っ張っていく。
兎の女の子の突然の行動に驚き、思わずあたふたしてしまう…。
何を言っても無駄だと悟った僕は、仕方なく店内へと入った。
「いらっしゃいませー!あら…?」
兎の女の子に連れられて入ってきた僕に、お店の厨房にいた猫のお姉さんが気がついた。
見た感じでは、兎の女の子より年上なのかな。
「ミーちゃん、その子は?」
「道を教えて欲しいんだって!外で立ち話するよりも中の方がいいと思って」
僕は「す、すいません…」とただただ申し訳なくて頭を下げて謝る。
それと同時に僕の尻尾も申し訳なさそうにゆらゆらと横に揺れた。
しかし、そんな事はお構い無しに女の子は僕をテーブル席へ座らせた。
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