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「レナさんの所でお世話になってる子みたいです。そういえば、九尾の子なんて珍しいですよね」
男性は、灰色の毛並みの狼の姿をした獣人さん。
そして、僕が去って行った方角をじっと見つめていた。
「そうですか、レナさんの…」
一方、大通りを離れた僕は、レオン君のお墓のある丘までやって来た。
昨日とは違い隠れる必要もないため、小走りに丘を登って行く。
時々辺りを見回し、綺麗な花が目に入ると、それを少しずつ詰み、小さな花束を作った。
そして、頂上まで登るとレオン君のお墓に花束を供え、手を合わせて目を閉じた。
手を合わせていたのは、ほんの数秒のはずだったけど、なんだかとても長く感じた。
そういえば、レオン君のお墓に書いてある『希望の力』って何だろう?
レオン君はそんなに強い子だったのかな…。
「僕は君みたいに強い人になれるかな…。ちょっと自信ないよ…」
僕は、ボソッと物悲しそうに呟く。
そんな時、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ほぅ…また君と会えるとはの…」
「あっ…おはようございます!」
振り返るとそこにいたのは、先日ここで会ったお爺さんだった。
お爺さんは、レオン君のお墓に手を合わせると僕の頭にそっと手を添えた…。
「町の人から聞いたよ。君が町を守ってくれたとか…。ありがとう」
「い、いえ…僕はただ…」
お爺さんからの突然のお礼にあたふたとする。
そんな僕の様子にお爺さんはニッコリと微笑んだ。
僕もお爺さんの微笑む顔を見たらなんだかホッとしてクスクスと笑った。
そして、自分の名前を名乗り、レナさんのお店でお世話になる事を話した。
「…という事は、君とはここ以外でも会えそうじゃのう。そうか、レナ様の所で…」
ん?レナ『様』…?
一体どういう事なんだろう。
「…あのよかったらお爺さんのお名前を教えて頂けませんか?」
お爺さんの口から溢れた『レナ様』という言葉に疑問だけど、とりあえずお爺さんの名前を教えて貰おうと名前を尋ねる。
お爺さんは「すまん、そうじゃったな」と苦笑いをした。
「私はバレル。昔、お城に仕えた事もあるが今はただの老いぼれじゃよ」
そう言いながらバレルさんはふと道の方へ目を向けた。
それに気がついた僕も同じ方角へ目を向ける。
すると、そこにはレナさんとココさん、そしてミーナちゃんが丘を登って来ているのが見えた。
「どうやら迎えが来たようじゃな」
お爺さんの言葉に「そうみたいですね」と答えると、レナさん達に手を大きく振る。
向こうもそれに気がついたようで、ミーナちゃんが元気よく手を振り返した。
「クロノ君、何かこの町の事で知りたい事があったら相談に来るといい。老いぼれの私に出来るのは若い世代に知識を伝える事位じゃ」
「この町の事はまだ分からない事だらけなので、助かります!それじゃ失礼します」
僕は、深く頭を下げると駆け足で丘を下って行った。
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