第5話 虹と月の魔力

2/11
前へ
/62ページ
次へ
自分が別の世界から来たレオンだと話そうか迷い、レナさんの顔を見る。 すると、レナさんは口の前で人差し指を立てて「ダメ」と合図を送っていた。 ここには沢山人が集まってるし、知れ渡っちゃうのは流石にまずいよね。 「それじゃあクロノ君。まずは君の力を私達に見せてくれるかな」 レナさんは、そう言うと竹刀を手渡してきた。 そして、シーカーの隊員の中から1人を呼び出し、その隊員さんにも竹刀を渡した。 2人は、レナさんに連れられ正方形の広い舞台へ上がる。 「それでは、今からクロノ君の入隊試験を兼ねた模擬試合を始めます。両者、全力で試合に臨むように」 審判はココさんが行うのかな。 さっきまでと雰囲気が違うからちょっとビックリ…。 それにしても、竹刀なんて初めてだけど大丈夫かな。 「よ、よろしくお願いします」 緊張しながら対戦相手の隊員さんへ頭を下げる。 隊員さんも応えるように一礼すると「遠慮せずに本気で来なさい」と言った。 そしてココさんの「試合開始!」と言う掛け声で試合が始まった。 まず、最初に飛び出したのは隊員さん。 僕の前に踏み込んで来ると竹刀で横へとなぎ払う。 結構速い…!まずは様子を見ようかな。 僕は、バックステップでふわりとかわす。 次に着地を狙って今度は竹刀を両手で上から振り下ろしてくる。 でも、これも竹刀を横向きに構えて受け止める。 ここからしばらく僕が隊員さんの攻撃を受け止める試合展開が続いた。 攻める隊員さんと守りに入る僕…。 戦っている隊員さんは勿論、周りで見ている他の隊員達も『一方的な試合』だと思っていた。 でも、これは僕の作戦みたいな物。 『ある時』を境に試合の流れが変わり始める…。 連続攻撃で追い詰めようとしてきたけど、攻撃を受け止めていたさっきとは違い、僕は、全ての攻撃をかわした。 縦斬り、横斬り、そして突き、斬り上げ…。 相手の攻撃を全てギリギリの距離で次々とかわしていき、最小限の反撃を繰り出し始める。 「(な、何だ…さっきまでとはまるで様子が…)」 自分の攻撃が当たらない事に焦りを覚える隊員さん。 よし、もういいかな。 その一瞬の焦りを見逃さず、一気に隊員さんの懐に飛び込んだ。 そして、竹刀を横へなぎ払うと隊員さんの左の脇腹に命中。 隊員さんは、尻もちを付くと竹刀を離し、脇腹を抑えた。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加