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実は、魔力にはもう一つ…どの部類にも入らない魔力があった。
それは『闇の魔力』と言われ、ドス黒いオーラを纏い、月の魔力でさえも凌ぐ程強力と言われている。
しかし、闇の魔力に取り憑かれた者は、体を蝕まれるだけでなく、意志そのものまで奪われてしまう禁断の魔力だった。
そのため、学者さん達は闇の魔力が出てくる原因を調べている過程で
『虹色の魔力は、全ての魔力を宿すという事から、闇の魔力にも影響される可能性がある。
そして、月の魔力は、水晶の魔力という名前の如く、透き通るように美しい魔力故に、他の魔力に影響されると性質を変える事がある為、闇の魔力からの影響も同等である可能性がある』
と仮説を立てて更に研究を進める…ハズだった。
レナさんから聞いた話を軽くまとめると、こんな感じかな。
でも、問題はこの先…。
次にレナさんの口から語られたのは、なんとも信じられない事だった。
「差別が始まったのよ…」
僕の嫌な予感は的中してしまった。
虹色の魔力と月の魔力を持つ者への差別…いや、『処分』が始まってしまったんだ。
あろう事か仮説が外部へと漏れ出し、何の根拠もないまま、対象者を隔離、手当たり次第に処分していった。
多くが裏の世界に生きる者達によって行われていた為、各国が対応し始めた時にはもう手遅れだったそう。
「その後、闇の魔力と2つの魔力は表裏一体の様な関係である事は分かったんだけど、同時に直接、闇の魔力に変化する様な事は無い事も証明されたのよ」
そんな事があったなんて全然知らなかった。
大昔の話とはいえ、僕の胸もギュッと締め付けられるように苦しくなる。
「クロノ君、魔法を使う時は気をつけてね。虹色の魔力は珍しい存在…。悪人に目をつけられたら厄介だから…ね?」
レナさんは、そう言って僕の頭を優しく撫でる。
でも、不安な気持ちは晴れる事はなかった。
一通り説明を受けた後、僕は中庭にやってきた。
最初は、ミーナちゃんとココさんが付き合ってくれると言っていたけど、何だか1人になりたかったからお断りしちゃった。
中庭には、噴水があったり木やお花などの植物も植えられていてのどかな雰囲気が漂っている。
僕は、木陰に腰を落とすと軽くため息を吐く。
「…辛いお話だったな」
思わずボソッと口から溢れる。
「闇の魔力のお話の事かしら?」
「ふぇっ!?」
突然の声にビクッと驚く。
慌てて振り返ると木の後ろからルナ王妃がクスクスと微笑みながら覗き込んでいた。
へ、変な声も出しちゃったし、恥ずかしい…!
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