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何度も弾かれて押し戻されても、その都度、セシルさんへと飛び出し続けた。
そして、セシルさんも僕に向かって飛び出し始め、お互いの剣をぶつけ合いながら中庭を飛び回った。
しばらくすると、流石に息が上がり始めた。
正直な所、もう限界なんだけど…。
セシルさんも呼吸は早くなっているけど、全然バテてはいないみたいだ。
「ここまでにしようか」
そう言うとセシルさんは、ギアブレードの刀身を閉じ、腰のベルトへとしまった。
僕も呼吸を整えながらギアブレードの刀身を閉じた。
「やはり、君はレオン君とは全く違うタイプの戦い方をするようだね」
「あっ…」
セシルさんの口からレオン君の名前が出てきて思わず固まってしまう。
「すまないね。ここに来る前に君の事をレナさんから聞いたんだ。でも、君は君だ。僕達の知っているレオン君とは違う…。それで良いんだ」
セシルさんは、僕に近づくとしゃがみ込んで僕に目線を合わせる。
そして「最後に一つだけ聞かせてくれないか」と言ってきた。
何だろう?不思議と緊張するな…。
「君の心に闇はあるかい?」
「えっ」
セシルさんの言っている事がよく分からない。
闇…?それって恨みや憎しみって事かな。
正直な所、僕はFATE(フェイト)を憎んでる。
お母さんを行方不明にした上に、沢山の人達を実験体にして命を奪ったんだから…。
「勿論、あると思います」
きっとみんながみんな、何かしらの闇を抱えていると思う。
人には感情がある。だから良い心も悪い心も…。
でも、それが当たり前だと、僕は思う。
僕は、セシルさんに自分の考えを伝えた。
セシルさんは、変な顔をせずに深く頷いた。
「その答えが聞けてよかったよ」
セシルさんは、そう言うとギアブレードを持っている僕の右手をそっと両手で掴んだ。
「ギアブレードを握る時は忘れないで欲しい。ギアブレードは君の心を、持ち主の心を映す鏡だと…。決して憎しみに囚われてギアブレードを振るってはいけないんだ。いいね?」
僕は、ギアブレードをじっと見つめ、少し遅れて「はい」と返事をした。
返事を聞いたセシルさんは、ニッコリと微笑むと片手で僕の頭をクシャクシャと撫でた。
突然の事に思わず「わわっ…!」と声を上げてしまう…。
でも、何だか嬉しいな。
「セシルさん?クロノ君が困ってますよ?」
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