第6話 休息 思い出とギター

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僕としてはもっと色んな経験を積みたいから沢山の人とお手合わせしたい所なんだけど。 僕は、ひとまず勉強道具を置くとギアブレードを手に持った。 歯車をはめて右手で持つとエネルギー刃が展開される。 実はこれも訓練の一つ。 虹色の魔力を持っているとはいえ、僕の中にはセアラさんの力も働いているため、本来の半分程しか力を出せていないみたい。 だからギアブレードを安定して展開する事も僕にとっては大切な訓練の一つになっているんだ。 それからギアブレードの整備や基礎訓練を1時間程やっていたんだけど、セシルさんは戻ってくる気配がなかった。 もしかして、何か厄介な事件でも起こったんだろうか? そんな事が頭をよぎったけど、自分が突っ込んで迷惑をかけちゃいけないと思い、お城を後にして帰宅した。 「た、ただいまー…!」 僕は、裏口から入り、お店を一区切りつけて台所に立つレナさんに声をかけた。 もうここに来て大分経つのに、『ただいま』という言葉を自分の口から出てくる事に未だに慣れない。 「お帰り、クロノ君。今日は早かったわね」 未だにぎこちない僕の『ただいま』にクスクスと苦笑いするレナさん。 恥ずかしいけど、レナさんやココさん、ミーナちゃんに『お帰り』って言ってもらうとホッとする…。 僕は、セシルさんが王様の所に行ったままシーカー本部へ戻って来なかった事を伝えた。 その時、レナさんの表情がちょっとだけ引き締まるのが僕にも分かった。 「少し気になるね…。でも、ここには帰って来ると思うからその時に話を聞きましょう」 レナさんの提案に「はい」と答えた時だった。 「あ、クロノ君帰った?」 突然、お店に通じる扉が開いたかと思うと、ココさんが慌ただしく飛び込んできた。 「帰って来たばかりで悪いんだけど、配達をお願いしてもいいかな?今ちょっと手が離せなくて」 ココさんの手には数種類のパンが袋詰めされている。 クローバーは、カフェと簡単な宿泊施設だから本来ならこういった配達はしてないんだけど、時々お願いされる時がある。 こういう時、大体は御得意様だ。 「はい!どこに届ければいいんですか?」 僕は、ココさんからパンの入った袋を受け取ると両手でしっかりと抱えた。 お客様の商品だから気をつけないとね。
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