1人が本棚に入れています
本棚に追加
後からミーナさんも地図を持って出てきた。
これならすぐに目的地まで行けそう。
「いや…これ以上、僕と関わるときっと危険です。もう誰も巻き込みたくない…」
僕の『誰も巻き込みたくない』という言葉の意味が理解出来ない様子のココさんとミーナさん。
2人はきょとんとしながら顔を見合わせている。
そんなミーナさんから地図を受け取った僕はちょこんと頭を下げた。
「道を教えてもらうだけなのに色々ありがとうございました。あと、もう一つ…聞きたいことがあるんですけど…」
よし、確かめるためだ…勝負してみよう。
僕は覚悟を決めて2人にある質問を投げかけた。
「2人は…魔女、或いは魔法使いなんですか…?」
「…っ!!」
僕の質問に思わず驚き、固まってしまう2人…。
世界には、ごく一部の人が魔力を持っていると言われている。
今では争いこそなくなったが昔は『危険な者』と捉える人も少なくなく、争いの種になった事もあったとか。
そのため、普段は魔力が解らないように力を抑えての生活をしている。
そして、ミーナさんが開店前に読んでいた新聞に書いてあった誘拐事件…。
実はあれも魔力を持つ人ばかりが拐われていた。
やっぱり、この世界でも魔法が使える人は良く思われていないんだろうか…。
2人の反応を見た時、嫌な予感はしていた。
そして、それは僕の中で確信に変わっていた。
この世界でも『奴等』は存在している事を…。
僕は地図をギュッと握りしめてお店を出ようとする。
すると、その時だった。
ミーナさんが僕に向かって飛び出してきた。
僕はとっさに真上に飛び上がってかわすと天井を蹴って2人から離れた所へ着地した。
突然の出来事に心臓の鼓動が早くなって、額から汗が噴き出てくる。
でも、それも束の間。今度はココさんが着地した所を狙って飛び出して来ていた。
両手を広げて迫ってきていたココさん。
でも僕だって負けちゃいない。
手が届くギリギリの所で横へジャンプして再び距離を取った。
「(一体何なの…?私たちの魔力を見抜くなんて…ただの子供じゃない…!?)」
「ここで逃がすわけには…!」
ミーナさんは、そう言いながら僕に向けて右手を突き出す。
まさか…こんな所で使わないよね…?
こんな所で魔法なんて使えばお店の中だってただじゃ済まない。
そればかりか、騒ぎになれば人が集まってきてしまう…。
でも、そんな僕の心配は見事に的中する。
ミーナさんの右手から氷の球が放たれ、僕に向かって真っ直ぐ飛んできた。
「ミーちゃん、ダメ!お店の中で魔法なんて使ったら…!」
僕は勿論、ココさんもまさか魔法を使うとは思っていなかったみたい…。
でも、既に魔法は使われた後…。
放たれた氷の魔法は僕に迫ってきている。
よし…覚悟を決めよう!
もう『力』を使うしかない!
僕は、左足を一歩前へ踏み出すと、包帯の巻かれた左手を前に出した。
手のひらをそのまま前に向け、氷の球を掴むように構える。
「(何をする気なの!?)」
避けようとしない僕に驚くココさん。
そりゃそうだよね…避けられない訳じゃないのにあえて動こうとしなかったんだから…。
そして、遂に氷の球が僕の左手に当たった。
でも、氷の球は僕の左手に当たった瞬間に弾けてしまった。
「えっ!?」
「ミーちゃんの魔法が効かない…?」
「ほ、本当にすいませんでした!」
驚いたまま固まる2人をよそに、僕は、再び頭を下げると店を飛び出して行った。
最初のコメントを投稿しよう!