第1話 夢のはじまり…

3/5
前へ
/62ページ
次へ
後からミーナさんも地図を持って出てきた。 これならすぐに目的地まで行けそう。 「いや…これ以上、僕と関わるときっと危険です。もう誰も巻き込みたくない…」 僕の『誰も巻き込みたくない』という言葉の意味が理解出来ない様子のココさんとミーナさん。 2人はきょとんとしながら顔を見合わせている。 そんなミーナさんから地図を受け取った僕はちょこんと頭を下げた。 「道を教えてもらうだけなのに色々ありがとうございました。あと、もう一つ…聞きたいことがあるんですけど…」 よし、確かめるためだ…勝負してみよう。 僕は覚悟を決めて2人にある質問を投げかけた。 「2人は…魔女、或いは魔法使いなんですか…?」 「…っ!!」 僕の質問に思わず驚き、固まってしまう2人…。 世界には、ごく一部の人が魔力を持っていると言われている。 今では争いこそなくなったが昔は『危険な者』と捉える人も少なくなく、争いの種になった事もあったとか。 そのため、普段は魔力が解らないように力を抑えての生活をしている。 そして、ミーナさんが開店前に読んでいた新聞に書いてあった誘拐事件…。 実はあれも魔力を持つ人ばかりが拐われていた。 やっぱり、この世界でも魔法が使える人は良く思われていないんだろうか…。 2人の反応を見た時、嫌な予感はしていた。 そして、それは僕の中で確信に変わっていた。 この世界でも『奴等』は存在している事を…。 僕は地図をギュッと握りしめてお店を出ようとする。 すると、その時だった。 ミーナさんが僕に向かって飛び出してきた。 僕はとっさに真上に飛び上がってかわすと天井を蹴って2人から離れた所へ着地した。 突然の出来事に心臓の鼓動が早くなって、額から汗が噴き出てくる。 でも、それも束の間。今度はココさんが着地した所を狙って飛び出して来ていた。 両手を広げて迫ってきていたココさん。 でも僕だって負けちゃいない。 手が届くギリギリの所で横へジャンプして再び距離を取った。 「(一体何なの…?私たちの魔力を見抜くなんて…ただの子供じゃない…!?)」 「ここで逃がすわけには…!」 ミーナさんは、そう言いながら僕に向けて右手を突き出す。 まさか…こんな所で使わないよね…? こんな所で魔法なんて使えばお店の中だってただじゃ済まない。 そればかりか、騒ぎになれば人が集まってきてしまう…。 でも、そんな僕の心配は見事に的中する。 ミーナさんの右手から氷の球が放たれ、僕に向かって真っ直ぐ飛んできた。 「ミーちゃん、ダメ!お店の中で魔法なんて使ったら…!」 僕は勿論、ココさんもまさか魔法を使うとは思っていなかったみたい…。 でも、既に魔法は使われた後…。 放たれた氷の魔法は僕に迫ってきている。 よし…覚悟を決めよう! もう『力』を使うしかない! 僕は、左足を一歩前へ踏み出すと、包帯の巻かれた左手を前に出した。 手のひらをそのまま前に向け、氷の球を掴むように構える。 「(何をする気なの!?)」 避けようとしない僕に驚くココさん。 そりゃそうだよね…避けられない訳じゃないのにあえて動こうとしなかったんだから…。 そして、遂に氷の球が僕の左手に当たった。 でも、氷の球は僕の左手に当たった瞬間に弾けてしまった。 「えっ!?」 「ミーちゃんの魔法が効かない…?」 「ほ、本当にすいませんでした!」 驚いたまま固まる2人をよそに、僕は、再び頭を下げると店を飛び出して行った。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加