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――恐らく、目的は神狩りだろうな。表向きには郷都の治安維持だとかで活動しているが、奴らの真の目的は神子を狩ること。
仕事をしながら色々と神戦組の情報を仕入れてはいるが、良くない噂が多い。ようやく動きを見せ始めたか。
俺がこの郷都の街に来てかなり経つが、この街は他と比べても神子が多いな。多いと言っても30も40もこの目で確認した訳ではねぇけど。
水無月の満月の晩に、何も知らない神子はのうのうと会合でも開くんだろう。かわいそうなこった。
「にしても なんでそんなこと、俺にわざわざ?」
へらへらしながら尋ねたものの、姉ちゃんは真剣そのものだった。
「そりゃ、もちろんその日の晩には越後屋と池田屋に近づかないように忠告するためだよ……。それに、そこにいるものは女子供関係なく皆殺しにするって言ってたもんだから、巻き込まれないように気をつけなよ」
「わざわざありがとな」
「私たちは島原から出られないし、神戦組を止める力なんか持っちゃいない……でも、こうして客を助けることくらいなら出来るからね」
「……そうだな、まぁ、その日は家に籠ってじっとしとくさ」
「ならいいんだ、他にも知り合いや親しい人には忠告しときなよ。被害にあってからじゃ遅いからね」
わかったわかった、と軽く頷きながら残りの酒をぐいと飲み干す。
「……酒も飲み終えたし、今日は帰るな」
「そうかい。わかったよ」
姉ちゃんに店先まで送ってもらい、生ぬるい風の中をゆっくり歩く。
それにしてもいよいよ神戦組が動き始めたか。
結構面白そうじゃねえか。その日の晩は池田屋に酒を飲みに行ってみるかな。高みの見物といこう。
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