十六夜の日 街中にて(多能 九兵衛)

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瓦版を貰おうと人集りの方へと近づく。 するとだんだん事件のことが掴めてきた。 「神戦組、越後屋と池田屋に討ち入り!」 「幕府の要請で一体何をしたのか! もしかすると次狙われるのはあの店かもしれないよ!」 へぇ、あの連中の名前は神戦組っていうんか。 宿と食事処に討ち入り……? なんや悪い奴が会合でも開いとったんか。そら怖いなぁ。 まあ神戦組が郷都の治安維持をして、色々と守ってくれとんならそこまで怖がる必要も無いやろうに。 瓦版を受け取り、ゆっくり目を通す。 なになに……神戦組が宿と食事処に討ち入りと。 そこまでは分かっとったが、読み進めていくうちに訳がわからんなってくる。 「その場に居た店の者、客、皆殺し。神戦組は女子供にも容赦のない鬼……やて?」 悪い奴らを匿っていたから店の者も全員殺されたんか? そんなに悪い奴らばかりおったんか? 「無関係の客、辺りを通りがかった者すらも滅多刺しに。真実について全く口を開かない神戦組の真の目的はいかに」 へぇ……そりゃ街の連中が怖がるのも無理はないな。 「遠くから様子を見ていた者によると、神戦組は狩りだと嬉嬉として叫びながら人々を斬り捨てた」 狩り……? 人を殺すことをわざわざそんな言い方してんのか。 神戦組は野蛮な連中だと街の噂で聞いてはおるけど、そこまでとはな。人を人だと思うてないんやろう。 それにしても昨晩の事件は不可解やな。 無関係の通行人まで殺したのもひっかかる。 けどそれはまぁ、口封じのためやろうな……。 そうするってことは、何か神戦組には隠したいことや後ろめたいことがある、というのは確かや。 きっとそうやな。隠したいことっていうのが何なのか気になるところやけど……。 さすがに一般市民には分かりかねるわ。
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