花になるには程遠い

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「そういえば、桃ちゃんはどうだったの?」 「どうだったって?」 「大樹さんとだよ」 “大樹さん”と、その名前を出した瞬間に黙り込んでしまった桃ちゃん。 結局あの日は何も聞けずじまいだったから、今日会ったら直接聞こうと思っていたのだ。 帰り道の車内では行きと同様、大樹さんに時々軽口を叩く桃ちゃんの姿が見られたけど……それだけで判断することはできなかったから。 期待と少しの不安を胸に桃ちゃんからの返答を待っていれば――小声ながら確かに耳に届いたのは、私が望んでいた答えだった。 「まあ、一応……よりを戻すことになったわ」 「っ、桃ちゃん……‼」 「ア、アイツがどうしてもって泣きついてきたから……もう1度くらい、信じてやってもいいかなって思っただけよ」 少しだけ唇を尖らせて視線を彷徨わせているその頬はほんのり色づいていて、照れていることが伝わってくる。 「ふふっ」 「……な~に笑ってるのかしら? 澪ちゃん?」 「べっつに~! ……桃ちゃん、よかったね」 恋愛のことになると素直じゃなくなるらしい親友の可愛らしい一面に、思わず頬が緩んでしまう。 「……ありがと」と紡がれたお礼の言葉はいつもの桃ちゃんからは考えられないくらいに小さくて。 そんな姿にまた笑みを零してしまえば、桃ちゃんから照れ隠しという名のもと頬を思いきり引っ張られることになるのだった。
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