かわいい独り占め

39/41
前へ
/197ページ
次へ
「っ、……ごめんね。小鳥遊さんが百面相してるのがあんまり面白くて……」 隣を見れば、小さく肩を震わせた高遠先輩が口元を抑えている。 指の隙間から見える口元は弧を描いていて、その隠しきれていない表情に――先程とは違った羞恥心が顔を出した。 「っ、わ、私、真剣に考えてたのに!……笑うなんてひどいですよ……」 思わず不貞腐れたような物言いをしてしまった。 だって……ひどいじゃないか。 こっちは真剣に考えていたのに、その姿を見て笑うだなんて。 ジト目で隣を見遣れば、視線が合った先輩は口元から手を外す。 だけどその口元は変わらずに緩んだままだ。 「ごめんごめん。でも今笑ったのは小鳥遊さんを馬鹿にしたからとかじゃないよ。……小鳥遊さんが俺のことを考えてくれてるのが伝わってきて……嬉しくてさ。あんまり可愛いから、つい笑っちゃったんだ」 「ごめんね?」と小さく首を傾げて笑う先輩は――本当に、私の知る高遠先輩なのだろうか。
/197ページ

最初のコメントを投稿しよう!

388人が本棚に入れています
本棚に追加