388人が本棚に入れています
本棚に追加
「っ、……ごめんね。小鳥遊さんが百面相してるのがあんまり面白くて……」
隣を見れば、小さく肩を震わせた高遠先輩が口元を抑えている。
指の隙間から見える口元は弧を描いていて、その隠しきれていない表情に――先程とは違った羞恥心が顔を出した。
「っ、わ、私、真剣に考えてたのに!……笑うなんてひどいですよ……」
思わず不貞腐れたような物言いをしてしまった。
だって……ひどいじゃないか。
こっちは真剣に考えていたのに、その姿を見て笑うだなんて。
ジト目で隣を見遣れば、視線が合った先輩は口元から手を外す。
だけどその口元は変わらずに緩んだままだ。
「ごめんごめん。でも今笑ったのは小鳥遊さんを馬鹿にしたからとかじゃないよ。……小鳥遊さんが俺のことを考えてくれてるのが伝わってきて……嬉しくてさ。あんまり可愛いから、つい笑っちゃったんだ」
「ごめんね?」と小さく首を傾げて笑う先輩は――本当に、私の知る高遠先輩なのだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!