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試合の後、郡司は地下三階に来ていた。今回の勝利の報酬を受けとるためだ。試合の直後、シャワーも浴びず服も着ないで直行したのである。
慌ただしい勢いで階段を降りて、頑丈そうな金属製のドアを叩く。
ややあって、金属音とともにドアが開かれた。中から、美しい女が顔を出す。年齢は二十代の半ばだろうか。背は高く、モデル並のスタイルである。肌もあらわな黒いドレスを着ており、妖艶な笑みを浮かべていた。
「あらグンちゃん、いらっしゃい……って、なんて格好で来てんの。せめてシャツくらい着てきなさい」
馴れ馴れしい口調で言いながら、郡司の厚い胸板に手を這わせる。だが、彼はその手を払いのけた。
「気安く触るんじゃねえ。ファイトマネーは?」
「つれないのね。ちゃんと振り込んでおくから大丈夫」
「で、あれの用意は出来てるか?」
その言葉に、女はクスリと笑った。
「もう、グンちゃんも好きね。ちゃんと用意してあるよ」
そう言って、奥のドアを指差す。郡司は彼女の横を通り抜け、奥のドアを開けた。
中へと入っていく。
それは、異様な光景であった──
室内には、家具らしきものは置かれていない。白い壁に囲まれており、床にはベージュ色の絨毯が敷かれている。その絨毯の上に、郡司は仰向けで寝ていた。両手両足を広げた、大の字の体勢である。
そんな彼の周りにいるのは、十匹を超える仔猫であった。ロシアンブルー、シャム、ペルシャ、マンチカン、アメリカンショートヘアーなどなど……可愛らしい仔猫たちが郡司の周りに集まり、彼の体に肉球を押し当て小刻みに動かしている。いわゆる「ふみふみ」だ。目を細めて、喉をゴロゴロ鳴らしながら夢中で前足を動かしているのだ。まるで、マッサージしているかのようである。
そんな仔猫たちに囲まれている郡司の顔には、恍惚とした表情が浮かんでいた。
そう、彼はこのために闘い、そして勝ったのである。
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