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「ただいまー」  今日の学校もつまらなかった。仲良くもないクラスメイトと雑居房みたいな教室で過ごしているより、一人でゲームをしている方が百倍楽しい。私はいつも通りに荒んだ心でローファーを脱ぐ。このローファーも、投げ出したいぐらい嫌いだ。私が必要な靴は、ココリナとお出かけする時の靴だけだ。 「くるみ! ココリナが!」  めったに声を荒らげないママが、焦った様子で叫んでいる。私は尋常ではないママの様子に頭がズキズキして、急いでリビングに向かった。 「ココリナ!?」  小さな身体が、いつも寝ている平べったい布団の上でがくがくと小刻みに震えている。痙攣しているんだ。私は今までにないココリナの様子に持っていた通学用鞄をすぐさま手放し駆け寄った。  三分ほどでココリナの痙攣は治まった。私とママはぐったりとしたココリナを連れて、すぐにいつも通っている病院へ向かった。  ココリナの耳には前から悪性のできものがあって病院に通っていたけど、それが脳にも影響して痙攣を起こしたのかもしれない。  病院の先生は詳しく検査してくれ、ココリナに点滴を打ってくれた。 「ココリナ、心配ね」  それから家へ帰る途中、ママは不安げな目でココリナを撫でていた。私も犬用カートに乗って眠るココリナを見つめながら、この先に迫ってくる見えない不快なものを感じていた。ココリナの様子はというと、痙攣が起こる前のように、いつもの顔つきに戻って落ち着いていた。  ココリナが痙攣を起こした日から、私は学校へ行く時以外は一階でココリナと一緒に毎日を過ごした。毎日ママと病院へ行って、パパの仕事が休みの日には車に乗せてもらって行くこともあった。ココリナは痙攣を起こす前はいつも病院へ行くために車に乗る時は怖がっていたのに、ここ最近は怯えることもなくなっていた。  ママもパパも、そして私も日に日に力が無くなっていくココリナを看病することに精一杯だった。他のことを考える余裕も無かった。  私は気づけば自分の部屋で渚くんのポスターを見ながら眠ることも無く、渚くんの夢を見ることも無くなっていた。
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