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「ココリナ?」  何度か痙攣を起こした夜もあったけど、今日はココリナ、落ち着いてる。そう思ったのに、夜中、一緒に眠る布団の中でココリナが苦しそうに、静かに呻きはじめた。  でも、もうできることはそばに居てあげることだけだった。今日病院へ行った時、先生の話を聞いてココリナが静かに時間を過ごせるように見守ることを家族で決めていた。  私はココリナの身体を撫でてあげることしかできなかった。ココリナは小さな身体で、必死に生きていた。  その一時間後に、ココリナは身体に溜まっていたものをたくさん吐き出して、その後は落ち着いたのか寝息を立てて身体を休めていた。窓の外からは雨音が聞こえてきて、それが静かな部屋に染み込んでいた。雨は誰かが泣いているみたいってよく言うけれど、私の代わりに涙を流してくれてるんだと思うこともなかった。そんなこと、しなくていい。  朝が巡ってきて、ぐったりとした身体を起こすことも出来ないままのココリナを病院へ連れていき、また点滴を打ってもらった。その時ココリナの身体は震えていて、私は小さくなって骨ばった頭を撫でた。ココリナはそれをただ受け入れてくれていた。  その帰り、ココリナはパパに抱かれて青空を見つめていた。私は昨夜の雨と打って変わって雲ひとつない快晴に、いつも思うはずもない不安を覚えた。晴れているのに、悲しい気持ちになるなんてね。  家に着くとママはココリナを抱いて庭の黒い椅子に座っていた。ココリナの息は小さく、時間の流れを緩やかにするみたいに、ゆっくりとしていた。 「ココリナ」  ココリナはママに抱かれていたまま身体に溜めていたものをまた外に流した。元々白内障になっていたココリナの目が、違う白みを帯びていく。私は消えていくココリナの心を感じた。ゆっくりと頭を撫でる。瞳から煌めきが遠ざかる。息が遠くなって、すうっと、広い青空に溶けていく姿に、私はしばらく涙を流せなかった。
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