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今朝の話
わたしは2人に、今朝会った女性の話をした。
1年生のわたしはまだ、この学校に通い始めて2ヶ月ほど。2年生の2人なら、何か知っているかもしれない。
そう思ったんだけど。
「うーん? 俺も、そんな先生に心当たり無いな……」
「まあ、我が校には教師が多いからね。知らない教師の1人や2人、気にする事はない」
(教師が多い……か)
それは、わたしも疑問に思っていた。教科によって、先生の多い日がある。
「そういえば、そうですね。美術の先生が、2人居たりとか……」
「えっ?」
「美術教師が、2人?」
由利先輩と部長が、不思議そうな顔をする。2年生の美術は、先生1人なのだろうか?
「1人の先生は、無言でわたしの絵を描き直すんです!」
わたしは特別、絵が得意な訳では無い。けれど、無言で描き直しされるのは嫌だし、さすがにやり過ぎだと思う。
なのに部長は、ニヤリと笑みを浮かべて言う。
「……それは、江沢君の絵が、下手だからだろう?」
「部長、ひどい! わたしは、一生懸命描いたのに!」
「そんなに自信があるなら、今度持ってくれば良いだろう?」
「言われなくても、返ってきたら持ってきます!」
言い合いになるわたしと部長を見て、由利先輩が楽しそうに笑う。そうだ、由利先輩が見てるんだった。
「あの、由利先輩! わたし達、普段は、こんなんじゃないですからね!?」
慌てて取り繕っても、もう遅い。部長が、ニヤリと意地悪く笑う。
「江沢ユナ。君は本当に、面白い」と。
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