5人が本棚に入れています
本棚に追加
「こ、降霊術は……コックリさんの事です!」
「……大丈夫か?」
部長が心配そうに聞く。
大丈夫も何も、先輩が言い出した事なのに。そう言い返したい所だけど。由利先輩に、そんな自分を見せたくない。
「あの……。手順さえ守れば、大丈夫だと思いますよ?」
「ああ、すまない。説明が足りなかったな。色は、憑かれやすい体質でね?」
(……疲れやすい?)
虚弱体質という事だろうか?
由利先輩は、そんな体質で生徒会長を。なんて、立派な人なんだろう。
「由利先輩って、偉いですね」
「……そう、かな?」
「また何か、誤解しているようだな……」
部長がブツブツと何か言ったけれど、気にしない。だって、由利先輩が偉いって事は、何一つ変わらない事実だもの。
「まあ、自己紹介も済んだんだ。色、何か話したい事はあるか?」
「うーん。そうだな。学校生活について、聞きたいかな?」
そう言って、また。由利先輩の瞳がわたしを捕える。
「江沢さんの」
「わたし……の……?」
由利先輩と目を合わせたら、吸い込まれてしまいそう。美しいその瞳は、上垣部長の瞳とよく似ていた。
「そういえば……」
今朝の出来事が頭をよぎる。見慣れない女性。
「通学路で、知らない女性を見かけました」
「知らない女性?」
先輩と部長の声が、綺麗に重なる。2人は声も、少しだけ似ている気がした。
最初のコメントを投稿しよう!