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むかしむかし、あるところに一柱の神様に愛されたこどもがおりました。その子は神様に愛されているという自覚はありませんでしたが、自分の望むものはほとんど手に入ることには気が付いていました。
あるときその子は一緒に遊んでいた子にからかわれました。他の人にとってはどうでもいいようなことで、けれどその子にとってはとても大事なことで、許せることではありませんでした。
その子にはわかっていました。その子の神様にはわかっていなかったことが、その子にはわかっていました。そしてそうなってもいいと思いました。だから願いました。
その結果、その星の生物はほとんど死んだのです。
けれどその子も知らないことがありました。神様はその子の神様一柱だけではなかったのです。
ほかの神様は怒りました。その星はみんなで観察しているもので、ほかの神様のほとんどは愛し子を決めず、ただその星がどうなっていくかを観察することを楽しんでいたからです。
結局、その神様は一からその星の生物を作り直す作業をすることになりました。それでは軽すぎると一部の神様は怒りました。同じように愛し子がいたような神様たちです。けれどこれだけ神様がいればまあ多数決でいいだろうということで決まりました。
それは難しいことでした。なぜならその神様は愛し子ばかりを見ていてそれ以外の生物のことはうろ覚えだったからです。
神様は思い出しました。愛し子が好きだった生物を。そういったものから作っていくことに決めました。愛し子が好きだった世界を見てみようと思ったのです。
大きくて鼻の長い生物、首の長い生物、小さくて愛し子と似たような形をした生物、それに羽が生えたような生物。いっぱいいました。いっぱい作りました。そのうち悲しくなってきました。もう愛し子はいないのです。それらの生物の何が好きだったのかを知ることもできないのです。
だめなのです。その種類をつくることはできても、個体を選んで作ることはできないのです。
祈りました。神様なのに何に祈ったのかはわかりません。もしかしたら失った愛し子に祈っていたのかもしれません。
けれどその祈りをうけとってくれるものはいないのです。
生物をつくれるからこそのこの悲しみは神様だからこそのもので、罰になり得ました。
長い時をかけて、神様が思い出せる生物は全て作り終わりました。ほかの神様はみんな喜んでまた観察を始めました。中にはその生物の中で愛し子を決めて観察する神様もいました。みんなその星の前のことは忘れていきました、その神様以外は。
これがこの星の成り立ちだといわれています。神様は私たちを見ています。いいことをするときも、わるいことをするときも、いつでも見ています。わるいことをするのでも、見られて恥ずかしくはないように生きましょう。
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