むかん

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試合はまさに佳境なのであろう。選手も家族の声援も一段と熱くなる中、強烈なシュートが決まった瞬間、孫と娘は抱き合い、妻も手を叩いて喜んだ。 いつもは静かな我が家も、このときばかりは熱気に包まれていた。 昨夜のスポーツコーナーの解説によれば、この試合、優勝経験のない無冠同士の戦いであるも、家族の応援するチームは決勝に進めるかどうかの瀬戸際だという。しかし今の得点で1点リードした。ここは是非とも家族の為に勝って欲しいものである。 しかしそれとは別に、この異常な試合風景に危機感を抱かざるを得ない。私は画面に映る無人の観客席に目を据え考える。 現在ムカン市付近で最初に発見された新型ウィルスの感染拡大対策による学校の休校。さらに外出やイベントの自粛要請が叫ばれる中、無観客試合を開催した関係者の判断に頭が下がる思いだ。 何故なら経済効果も大事だが、なにより学校に行けなくなった孫のストレス発散に少しでも役立つ事を期待しているからだ。 たが、やはり私のスポーツへの興味はここまでだ。やはりスポーツというものに興味をもてない。それどころか、何故赤の他人の成果に一喜一憂出来るのかということだ。 これについて試合開始前に娘に尋ねたところ、意見が真っ向から対立した挙句、放たれた言葉がこれだ。 「お父さんはスポーツに対して無関心じゃなくて単に無感なのよ」 ならばと同じ時間を共有を試みるも、無駄な時間を過ごしただけであった。
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