0人が本棚に入れています
本棚に追加
「脳の電脳化、知識の抽出完了。」
モニターには春人が横になった姿が映し出されており、そのモニターを白衣を着た男女が見つめる。
「精神と肉体の乖離完了。器の焼却を開始します。」
「鶫さん。こちらから春人さん宛てに送った調査書類読ませて貰いました。旦那様はとても優れた人だったようですね」
春人と鶫が過ごしたマンションの一室。家具のほとんどは片づけられ、白と黄色のクッションの置かれた青色のソファだけが残されている。ソファの右側に鶫が座り、向かいに立つ男性の話を聞いている。
「契約の通り、こちら旦那様の知識についた値段です。既に鶫さんの口座に振り込まれておりますが、こちらでも確認をお願いします。」
タブレット端末に表示されている数字の羅列を指で追う。確認が済んだのか端末を男性に返す鶫。
「ありがとうございます。ではこちらの書類にサインを――」
鶫は笑顔で書類に署名する。
署名を終えると、男性は一礼して玄関に向かう。
靴を履いて玄関のドアを開く。
「きっと今頃―― 旦那様は、一番幸せだった時の思い出の中で、楽しく生きていらっしゃいますよ――」
最初のコメントを投稿しよう!