一. メイスの幽霊

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「じゃあこのメモの意味、わかりますか?」  リオが聞くと、メイスはぎくりと目を泳がせた。 「……生きてたらすぐわかったんだけどな」  どうやら皆目見当もついていないらしい。  でも、そりゃそうか。知恵の女神の加護を受けた当人がつくった謎は、ただでさえ難しいはずだ。意識がもやもやとしたままの、幽霊状態のメイスに解けなくても仕方がない。  リオは手元のメモをもう一度見る。  “牡牛、白鳥、鷲の最初の  平和と戦いをつかさどる女神の  鎧を授けし知恵の”  このメモを手にとって、メイスの幽霊が見えるようになった。ということは、きっとこのメモは彼の死となにか密接な関わりがあるはずだ。  リオはすっと顔をあげた。 「……もし、死んだ時のことがわかったら、メイスはここからでられますか?」  まっすぐにメイスを見てたずねる。  ここからでたら、家族のもとに帰って、ちゃんとお別れができるだろうか。 「ああ、きっとね」 「……ちゃんと天国にいけますか?」  リオがそう聞くと、碧紺の瞳がふわりとやさしくなった。 「もちろん。僕は生まれてこのかた、悪いことをしたことがないからね」  メイスは得意げにほほえんだ。 「そうでしたっけ……?」  リオは知っている。メイスは工作好きで、寮の食堂のトースターを盗んでは改造したり、爆発させたりしていたこと。プラネタリウムをつくろうとしてガラクタを集めては、ライトの配列のせいで火事になりかけたこと。意地悪な先生に仕返しをしてくれた、“あの日”のこと。  でもたしかに、どれも悪いことじゃない。メイスがくれた楽しい思い出だ。 「なんだい、その顔は。一体いつ僕が悪いことしたって?」 「ふふ。いや、なんでもないです。……とにかく、」  リオはメモを自分のポケットにしまった。 「ぼく、手伝いますね。メイスがちゃんと天国に行けるように」
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