各々の矜持

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「陛下!敵が、第三防衛線を突破しましたッ!こちらの被害は甚大です!」 「状況は?」 「はッ。民間の被害も含め、死者およそ三千、重傷者多数とのことです。このままでは時間の問題です!」 状況は芳しくないな。まあ無理もない。我が国屈指の精鋭部隊がたった三人のならず者に蹂躙されるなんて、誰が予想できただろうか。 「陛下!!!敵が最終防衛線に到達しようとしています…!早くご指示を!」 フン、腕が鳴るな。こんなに追い詰められたのは何時ぶりだろうか。 まさしく背水の陣、だが、こちらにも守らなければいけないもの、負けられない理由がある。 「全兵に告ぐ!…俺が出る。それまで持ち堪えろォ!!!」 戦場の士気が一気に高まる。戦意を喪失しかけていた最終防衛線も、息を吹き返したようだ。 「あぁ… あなた… どうか、どうか…ご無事で…。」 「パパ… 帰ってくるよね…?」 わかっている…。この戦いが終わったら、また3人でピクニックに行こう。 前王の代から長々と王宮に仕えてきた、全幅の信頼を置く老臣に声をかける。 「お前に頼みたいことがある。あの二人を、城の裏門から連れ出してやってくれ。俺はもう戻れないかもしれん。その時は… わかるな。」 「かしこまりました、陛下…。どうか、ご無事で…。ご武運を祈っておりますぞ。」 「頼んだぞ。」 魔王は、勇者を倒すべく、城を後にした。
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