コンビニ

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コンビニ

 漸く仕事を終え、 へとへとになって帰宅しているとまだ灯りがついていることに気が付いた。 時計を見ると針はとっくに日を跨いでいた。あれ? 遅くなるから先に寝てていいよって伝えたのに、 と思いつつも自分を待っていてくれていることに口元が自然と弧を描く。  「 ただいま 」とドアをあけ声をかけるが返事がない。上着を脱ぎ、 ネクタイを緩めながら部屋を見渡しても目当ての人物は居ない。 だが、しっかりとした彼女だ。故に部屋の灯りはついているのは起きている証拠だ。  リビングに居ないということはあの部屋かな?そう思い廊下の先にある部屋へ足を運ぶ。  念のため、 かちゃりと静かにドアを開け、 そぉっと中を覗くと「 あ! やっぱりいた 」彼女の姿を見て思わず声に出しそうになるのを慌てて堪えた。  視線の先の彼女はゲームに夢中なようで俺の帰宅に気付いていないようだ。疲れきっていたはずが悪戯心がムズムズと湧いてくる。  「 ただいま、 起きてたんだね 」 声をかけると同時に背後から優しく抱きしめると彼女は 「 きゃあ!? 」 と、俺の腕の中で跳び跳ねて驚いた。  「 びっくりした? ごめんごめん 」 悪戯に成功した俺は今、 とてもご機嫌だが驚かされた彼女は少し膨れている。 …… が、そんな顔すら堪らないくらい愛しい。 抱きしめて自己満足していると彼女が俺の上着を着ていることに気付いた。 「 寒いなら暖房付けたらいいのに 」 「 …… 寒くはないんだけどさ、 あの、 なんというか…… その 。」 そう告げると顔を反らし、 モジモジと恥ずかしそうに小さな声で答えた。元から小さく話す彼女の語尾が段々小さくなっていく。 「 え ? 寒いわけじゃないの? 」 答えはなんとなくわかったが、 ここはどうしても彼女の口から答えが聞きたい俺は少しとぼけてみせる。 顔を真っ赤にして俺の耳にかすかに届く、 蚊の飛ぶような声で最後まで言ってくれた。 俺に抱きしめられてるみたいで寂しくないからだって?? きた! ! 期待通りの答えだ!! 「 くぅ~!! かわいいなぁ! 一瞬で癒されるわ! 」 あ、 やべ 。 心の中の声がモロに出たが、 気にしない。嬉しさのあまり彼女をぎゅっと強く抱きしめた。  「私、ちょっとコンビニ行ってくる!!」 俺の腕の中で顔を真っ赤にしたまま身動ぐ彼女がまたかわいい。 「 え? コンビニ行くの?? なら俺も行く!! 」 俺の腕からスルリと抜け出した彼女の腕を掴んでやった。 まだまだ癒しが足りないんだよ! 絶対離してやるもんか! 「 は? 今帰ってきたばっかじゃん! 」 彼女が少し口を尖らせて見せたが、「 いいじゃん、俺も肉まん食べたいんだ 。」 そう答えると彼女はよりいっそう不満を濃くした。  「 …… せっかく夕飯作ってるのに 」 彼女の拗ねてボソッと呟いた声すら今の上機嫌な俺は逃さない。 逃してやらないぞ! 「 ん? 晩飯? もちろん食べるよ! 俺の好きなハンバーグだったじゃん。食べるに決まってるっしょ! ってか食わないって選択肢はない! 」 そう高らかに声にすると彼女の顔が少し微笑んだのを俺は逃さない。 次いで言葉が溢れ出る。 「 あ! そういえば明日休みだよね? ならお菓子とジュースいっぱい買ってさ、 夜通しゲームしようよ! 」 「 え~、太るからヤダ~。 」 言葉は否定していても嬉しそうな彼女を再度引き寄せ太もも付近に手を這わす俺は今、 絶対鼻の下が伸びているだろう 。でも気にしない。 「 大丈夫! 太ったら二人で愛を語りながら激しく運動すればいいんだよ!」 彼女は笑いながら手を払わってバカじゃなの、とかそんなこと言ったって満更でもなさそうだ 。 そのままどちらからでもなく自然に手が、 指が絡んでいく。
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