社長に遊ばれています

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「バカなこと言わないでください。私は、社長が契約違反をしたのではないかと少々苛立っていただけです」 慌てて言いわけを口にすると、社長はにやにやしながら私に近づいてきた。というか、迫ってきた。 背後にベッドがあり、私は簡単に追い詰められてしまう。 「柳田さん、君は夜も眠れないほど悩んでいたのか?」 「は? 悩んでなんか……わっ!」 ドサッとベッドに仰向けになり、社長がすぐさま手をついて顔を近づけてきた。 「いいね。奴隷がいつの間にか心まで従順になっていく過程は実にそそられる」 「ちょっと待てえっ! その表現はおかしい、ていうか訂正して! 私をなんだと……」 社長が私の頬から首筋に指でつーっと撫でていき、びくっと身体が震えた。 彼は勝ち誇ったような顔つきをして、かなりの至近距離で私にささやく。 「今夜はどんなふうに苛めてほしいのか言ってみろ」 どっきーん! 私の身体が大喜びだ。 いや、違う。ここで流されてはいつもと同じだ。今日は冷静に対応しよう。 「すみません。眠いので寝させてください。ていうか寝ます」 しっかりとした口調で冷たく返すと、社長は一瞬真顔になり、その表情にぞくっとした。 まさかここで引き下がってくれるような人だとは思わなかったけれど。 彼は少しのあいだ私の顔を見て、そのあとゆっくり私から身体を離した。 あ、れ……? 「社長?」 「悪かった。疲れているだろう。今夜はゆっくり休むといい」 「え?」 嘘……どんなときも俺様で強引に無理やり襲う人が一体どうしたの? 社長はしばらくドアの前に立ったまま黙っていたが、やがて振り向いて私に訊ねた。 「柳田さん、君は今の関係をやめたいか?」 「え……」 ドキッとして私の胸中に動揺が広がる。 いや、これはチャンスではないか。これを機に社長との契約を解消すればめでたく幸人との関係を深めることができる。 幸人との幸せな未来を選ぶことができる。 幸人、と――。
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