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「やだなあ、何言ってるの? こんな時間に電車なくならないよ」  冗談だと思ってノンアルコールカクテルの追加注文をしていると、茜と美波まで「気をつかわなくていいよ」「遠いんだから、帰るの大変でしょう?」と言い出し、結局二十一時前にはお開きになってしまった。  気をつけて帰ってね、とさんざん念を押されながら、李花は電車に乗り込んだ。  友人たちは、李花が住んでいる茨城はとんでもない僻地だと思っている。  東京に住んでいたころはこうじゃなかった。残業終わりの二十一時から飲みに行き、終電を逃してタクシーで帰ったり、時には四人で朝まで語り明かしたりしていた。気のおけない友人たちとの飲み会はもっと頻繁に、気まぐれに行われていた。  あの三人はきっと、今もそうやって会っている。  そう思うと、李花の胸の奥は冷たくなった。
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