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高校を選んだ理由を聞いてみると、「女の子は勉強ばかりしていても結婚できなくなると親に言われたから」という答えが返ってきた。
いつの時代の話かと思うが、この辺りの人たちの価値観は錆びついていると李花もよく知っている。特別な話ではなく、よく聞く話だった。
幸いにも李花の両親は錆びついた価値観の持ち主ではなかった。成績は中程度の李花だったが東京の大学に進学し、東京の会社に就職した。
そのままずっと、東京にいるはずだった。
「ふるさとは……遠きにありて思うもの」
李花は小さな声で呟いた。高校の国語の授業で暗唱させられた室生犀星の詩が、地元に戻ってきてから記憶の底から掘り起こされるようになった。
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