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「俺、好きな人がいるんだ」
明の突然の告白に私は動揺した。
「ほぉ、誰かね・・・」
動揺のあまり、変な口調になってしまった。
少し時間をおいて、明は話し続けた。
「・・・そいつはとにかく明るい奴だ」
明るい・・・
それは私の唯一の取り柄だ。
会社が倒産になった翌日には明るさを取り戻した父の遺伝が、私には確実に受け継がれている。
明るさで私に勝てるやつはそうそういない。
「ちょっと頭が悪いけど」
頭が悪い・・・
それは、私のことじゃないか。
学年で1、2を争う馬鹿といえば私だ。
自分で言うのもあれだが、そこらへんの馬鹿とはレベルが違う。
張り合えるとすれば、双子の弟、渡ぐらいだろう
テストで1桁でないだけで先生が「よく頑張りましたね」と、涙ながらにいうほどである。
赤点を回避した日には、「革命だ」と同級生たちが騒ぎ始める。
まぁ、赤点回避はそうそう起こらない。
「誰に対しても優しい」
優しい・・・
まぁ、優しい心をもつ善良な人間といえば私だ。
どれくらい優しい心をもつかというと、昨日、楽しみにとっておいたプリンを食べてしまった愚かな弟を拳一つで許したというエピソードをもつぐらいだ。
・・・プリンは本当に楽しみだったのだ。
拳一つで収まったことを褒めてほしい。
そんなことはどうでもいい。
さっきから明の話す、好きな人の特徴は私に当てはまるものばかりだ。
・・・つまり、つまりこれは明からの遠回しな告白なのでは。
私は思い切って尋ねてみた。
「ねぇ。それって、わた」
間髪いれず、明は答えた。
「やはり、ばれていたか。」
「もう隠しても無駄だな」
胸の鼓動が早くなる。
顔が赤くなっていくのを感じる。
「ずっと好きだったんだ。渡が」
そして、私は叫んだ・・・
「そっちかぁぁぁぁぁぁぁい!」
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