真実

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「おう、無事ならなによりだ」 俺は紅潮してそっぽを向く。火傷の怪我より顔の火照りの方が酷い状態だ。 「私の怪我よりシュウさんのお怪我の方が酷いですね」 「こんなもん医者が大袈裟なんだ。ボクシングのバンテージじゃあるまいし」 「拳闘士みたいですね」 無邪気に笑うマリア。その右手には真っ白い包帯が巻かれている。他には怪我してる様子はない。端から見たら俺の方が酷い有り様だ。 その様子を見つめ、ソウイチロウ達の歓喜の声が響き渡る。無事だとは理解していたがこうして直接会うと喜びも倍増する。誰もが笑顔で心から安堵していた。 しかし浮かない表情の人物が一人、それは王城。小さく舌打ちして、怪訝そうにマリアを見つめている。俺以外は誰もが気付かないだろうが、醜悪な覇気を感じた。 「レイちゃん、来てくれたのですか?」 その空気を察せずマリアが言った。それと共に辺りから覇気が掻き消える。 「言ったよね、ちゃん、付けは止めてって」 言って歩み出す王城。 「よかった。無事そうで。連絡受けたときは驚いたんだよ」 「私はこの通り無事です」 「そうみたいだね。だけど気をつけなよ。キミはお嬢様だから知らないだろうけど、世の中ってのは、危険なことばかりだから」 「そうですね」 淡々と会話する二人。楽しげなマリアに対し王城の台詞には心が籠っていない。逆に残念そうな様子さえ窺える。
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