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場に漂う張り積めた空気。笑顔を崩さずカリカリと爪を噛む王城。その後方では弾正が危険な覇気を放っている。普段飄々としたソウイチロウも、やれやれといった状態で武装体勢を構える。誰かが迂闊に動き出せば、ここが戦場になることは火を見るより明らか。
「止めて下さい!」
その情況を引き裂くようにマリアが吠えた。
「レイちゃんはそんな悪い子ではありません。優しい子なんです」
俺と王城の間に立ち塞がり、必死に言い放つ。その様子はまるで幼子のようだ。現実はどうであれ真実は違う。そう言っているような気迫さえ感じる。
「シュウさんだって優しいお方です。喧嘩ばかりしてるけど、優しいお方。だから太助さん、一弥さん、真優さんなどに慕われている」
そしてその台詞で、俺は愕然となる。
「勘弁しろって。俺様は全然優しくねー。あの馬鹿どもは、勝手に関わってくるだけ。だからイヤなんだよ」
とんだやぶ蛇だ。まさか王城の文句を言って、俺に被害が飛ぶとは思いもしなかった。
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