真実

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腕を戻し、煙草をくわえて火を点けるオッサン。 「奴は、王城はマリアと同じく、我がグループの頭首候補なんだ」 そして言った。 「頭首候補ってのは、ミカドグループの後継者ってことか。マリアって訳じゃねーのか」 俺はマリアこそがミカドグループ次期頭首だと思ってた。あいつはグループ頭首、白城永吉の一人娘だ。だから自ずとそうなるって思ってた。 「我が一族は、世襲ではない。主だった親族が集まり、会議を開き、次の頭首を決める」 「確かにそうだわな。血筋だからってただの馬鹿が世襲したら、デカイ会社だってすぐに潰れる。そもそも世襲なんか、ヤクザ組織でも廃止傾向にある」 「血筋は大切だ。しかしそればかりじゃいかん。何事にも適任という言葉がある。荒波に打ち勝つ力強さを持ち、人を引き付ける魅力を備え、困難をも乗り越える勇気を持つ。その力量を備えた者が、次期頭首となるんだ。その検証の意味を含むのがオークへの転入、それと一年間の一人暮らし。可愛いには旅をさせろと言うじゃろ。獅子は千尋の谷に我が子を突き落とす。非情じゃがそれがワシらのやり方なんだ。全てはあの子の力量を測る試練」 極端なやり方だが、少しは理解もする。可愛いからっていつまでも箱の中じゃ生きていけない。誰しもいつかは巣だつ。そして世間の荒波に揉まれ、様々な災難にぶつかる。そうして人は成長していく。ミカドグループのような大規模企業を率いる者なら尚更だ。
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