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幕間
それらは概ね絶叫して喚くだけ。絶唱して美しい音を響かせて。良い音楽を奏でて。ぽろりぽろりと泣き虫が雫を落とす。静謐な気さえもこもった雫は川となり、やがては海へ流れ、上昇気流に乗って、雨となって再び地へ戻ってくる。すべては巡り巡る、輪廻転生。
今宵はようこそ当劇場へ。俺がこの人生劇場の支配人および語り部の景壱。そしてこやけの主人、目深帽子、その他諸々。今覚えていて欲しいことは、雨の眷属であり雨の末裔であるということだけ。ま……簡単に言うと雨の神様の親戚とだけ覚えておいて。他のことは忘れることを許可しよう。
ここにある匣は、どれも奇妙な物語がぎっしり詰まっている。蓋を開いて覗いてみてくれ。あなたを異界へ連れていってくれるだろう。正気度のチェックをしたいならダイスを振ろうか。今ならもれなくファンブルしか出ないが……それでもやる? アイデアロールのダイスを振れば、クリティカルで不定の狂気ではなく、完全な狂気に心体を侵されてしまうが、やってみる? いっそ完全に狂った方がこの世を楽に過ごせるかもしれない。狂っているなら、他人と無理に付き合う必要も無い。そもそも他人も寄ってこないだろう。さあ、運命のダイスを振るかどうかはあなた次第。
ちなみに、無理にダイスを振る必要は何処にも無い。何故なら、ここはそういう所だから。
誰もが狂い、四肢がどうとなろうが徒然なるままに。日暮、五体満足なのに、どうしようもなく使えないならば、腕の一本や二本、もいでしまおうか。
それとも、最初から芋虫のように這いずり回る道を選ぶか。
いや、これだと芋虫に失礼だ。芋虫には足がある。それも多い。何本あるか知りたい? そもそも、アレの数え方は本で良いのだろうか? 知りたいな。ま……それは今度にしておこう。
それでは、そろそろ物語を物語ろう。
光を与えられなかった者へ光を! 仄暗き井戸の底から現れる歓喜の瞬間、狂った歯車が逆に回り、絡繰りは動き始める。哀しみだけを飼いならしても、屍は同じ。
ある山奥の村では、星を求め、しあわせを求め、手を伸ばした者がいた。
絶対に届かないとわかっているのに、天へ手を伸ばす。理想や夢を追い求め、人々は日々努力をし、いつか夢が叶うと信じている。夢は叶わないから夢。しかし、叶えるためにあるのも夢。どちらも夢でどちらも現実。一説によると星降る夜には魔力が満ちる、魔力が満ちれば夢が叶う。
さて、しあわせを願う夢は叶うのだろうか。
どうかお見逃しなく。
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