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第四幕『星降る夜の秘めやかなまつり』
星降る夜はお祭り。
あの星々は、既に死んでいる? それとも生きている?
死の光は美しい。光年と言う途方もない時間の中では、人間の一生など、一瞬に過ぎないのだ。なればこそ、人は何を思い、何を得、何を失うのだろうか。何度傷つけば、過ちに気付くのだろうか。
学習せずとも、全てを感じ取れ。
「命の消える瞬間は美しい」
「数多に輝く天の星々。我らには、アレが生きているか死んでいるかさえもわかりませぬもの。しかし心配はご無用。我々は今を生きている。今を、この一瞬を、生きている。嗚呼、この世でもあの世でも全ての生命に幸多かれ!」
空色の青年と夕焼け色の少女が咫尺で笑む。
柘榴が爆ぜて、赤くなる。
天に落ちた風車が回る。
ぐるぅり、ぐるぅり、奇妙に回る。
ごぉっと風が舞い上がり、点鬼簿、天へと落ちていく。
静かに泳いでいる。首が回る。
ぐるんぐるんぐるん。ぐるん。
「消えてこそ、美しい」
空色の青年は、もんどりうって笑う。
あっはっはっはっはっはっはっは!
笑い声が星に吸い寄せられ、消えた。
夕焼け色の少女の演説は続く。
高らかに!
「我々は救われたのです。我らは枷を外されたのです。何も心配はご無用。心を配る必要は皆無。我らは、今を生きています。我らは、一瞬を重ねて生きています。我らは、しあわせです。我らは、ほんとうのさいわいを見つけたのです! 永久に続く安らぎを。静寂と安寧を! この安らぎだけは、どこの世界にも負けないものです! 嗚呼!」
あはあは。笑いながら、くるりくるり舞い踊る。
音が地へ昇り、足踏みする音が土に溶け込み、消えていく。
「嗚呼。たのしい。愉快愉快」
欲しいがままに生を貪り、無残に散った死を集めて祈る。
「痛みなど感じません。傷つけあうこともありません。何もかも、あらそいはありません。我らは、ほんとうのさいわいを手に入れたのです! 我らは、永久に続く安らぎを手にしました! 嗚呼、なんと甘美な響きでしょう!」
「終わりがあるからこそ、美しい。永久を愛せるものにしか、永久の安らぎは無い」
空色の青年は、星に歌う。ららららららららんらんらんらんららら。
夜が降り注ぐ。幾万もの死が落ちてくる。
見てはいけない。気付いてはいけない。知ってはいけない。理解ってはいけない。
「嗚呼! 僥倖しなければならない運命です。時計の針は、左へ進まないのです。過去は死んだ未来の残骸なのです。私達は常に前へ進まなければなりません。歩みを止めてはなりません。トーハの羽根を千枚縫い合わせて、今こそ、月へと落ちていきましょう。天へと落ちるのです。嗚呼。天へと落ちて、地へと昇る。最高です!」
カタカタカタカタ、映写機が逆さまに回り始める。
白い幕に映ったのは、愉快で苛烈なキネマ。
びっちゃり、びっちゃり、屍が身体を引きずり歩く。
嫋々、嫋々、嫋々。
琵琶の音が透き通った天に鳴り響く。
夕焼け色の少女は舞う。長い髪を揺らしながら。ふらり、ふらり、くるぅり、くるぅり、舞う。
「サア、貴方にもはっきり見えるでしょう! あの憎き月が! あの憎き顔が! あの青白い貌が! 今こそ、天へと落ちる時です。星と共に落ちる瞬間なのです。サア、もう翼はあるはず! あとは飛ぶだけ。どうか!」
映写機が映しだすのは、死んだ未来の残骸。
カタカタカタカタ……。
ららら、隣で舌を回しながら歌う空色の青年が笑む。
点鬼簿を集め、夜色に溶けた。
閃光に眩めき、暗転。星は流れ落ちた。
「これにて終焉」
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