重なる

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12時半頃に実家に着くと、リビングの母は素麺を食べながら驚きの顔をした。倫子は一言声を掛けて父の書斎に向かった。 「お父さん?」 ノックと同時にドアを開けたが、父がいないので、記憶を頼りに本棚を捜索する。 見ていると父がドアの所に立ち、不思議顔をしていた。 「倫子?帰って来てすぐ何してる?探し物か?」 「うん、あのさ。子供の頃、おじいちゃんの家で撮った写真なかった?珍しく総勢集まったって……おじいちゃんが言ってた時、あったよね?」 本棚の前で倫子が聞くと父は思い出した様に呟き、部屋に入って来た。 「倫子が五つ、くらいかな?小学校前だったと思うけどなぁ。珍しくな、親父の兄貴とかその子供とか結構な親戚が冠婚葬祭でもないのに集まったんだよなぁ。こんな事滅多にないって写真撮ったな。よいしょ…これだな?」 机の引き出しからアルバムが出て来た。 「見せて?」 「いいけど?どうした?」 奪い取る様にして、座り込みアルバムを開けた。 見かねた父がアルバムをめくり、指差してくれる。 「これだよ。お父さんの父親に母親、歳だなぁ。これがじいちゃんのお兄さん。何年か前に亡くなったけど、面白い人だったよ。父さんは好きだった。」 「……うん。」 父の話を聞きながら写真を見つめた。 当時、倫子は5歳か6歳位、10歳上なら15歳か16歳。 真ん中の端あたりにその人を見つける。 無言のまま指で示すと、父が倫子の指の先を見て答えた。 「あぁ、それは父さんの…倫子からしたらお祖父ちゃんのお姉さんのお子さんのお子さんだよ。近くに住んでて子供が沢山来てるからって遊びに来たんだ。山本って言うんだけどな。倫子、少し遊んでもらってただろ?覚えてないか。」 「沙織ちゃん?」 指した指が震えていた。 「あぁ、そう、確かそんな名前だったな。すっかりご無沙汰だけどどうしてるかなぁ。年賀状は出してたと思うけど、親父が亡くなってから疎遠だからなぁ。申し訳ないなぁ。」 と付け足し、倫子を見る。 青い顔で写真を凝視していた。
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