重なる

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「倫子?どうした?具合悪いのか?」 顔色を見て心配してくれる父に、倫子は笑顔を向けて聞く。 「お父さん、私、沙織ちゃんに似てたりする?」 「ん?沙織ちゃん?」 写真に目を落とし、真剣に見てから倫子を見た。 「どうかな?この写真小さいしな?顔は良く分からん!あんまり覚えてないしなぁ。血は繋がっているから何処か似ている部分はあるかもしれないけど、そこまで似てないだろ?道治も智徳も兄弟だけど顔は全然違うからな。」 笑いながら言う父に、そうだよね、と呟いて写真を見た。 「もう少し、これ見てていい?」 「いいよ?お昼はいいのか?」 「うん、食べて来た。後でリビングに行くね?お父さんありがとう。」 「いや?具合、悪くないんだな?」 「うん、平気。」 「それならいい。見たらおいで、そのまま置いておいていいからな。」 父はそう言い残し、ドアを静かに閉めて部屋を出て行った。 残された倫子はアルバムの中を探し、少しでも大きく写っている物を見つけてそれをスマホで撮影した。 スマホの画面を拡大する。 似ているとは思えない。 ジッと見つめる。 (新藤さんと沢木さん、初めて会った時、何処か似てる気がした。雰囲気とか空気とか…笑顔とか…。同じ事を私を見た新藤さんは思ったんじゃないの?) どうして新藤が倫子に会いたくなる、そう言って気が付けば居たのか、その本当の理由に行きついた気がしていた。 ーー「顔見たいなぁと思って、気が付いたらいたんです。」 マンション前に居た新藤の言葉を思い出す。 ーー「小さい頃に会ってるでしょ。沙織お姉ちゃんって呼んでくれたじゃない?思い出した?倫子ちゃん。」 あの日耳元で中原沙織に言われた言葉を思い出した。 「5歳じゃ…覚えてないわよ。」 呟いてアルバムを閉じた。 (好き…だからじゃない。倫也さん、その好きは…勘違いかもしれません。) キリキリと胃が痛んだ。
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