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夜は母が菜緒と二人で倫子の好物を作ってくれた。
昔の自分の部屋に布団を敷いていると、菜緒が顔を出した。
「倫子さんお風呂入りました?」
「あ、うん。ここに寝て本当にいいの?お母さんたちの部屋に行くけど?」
「大丈夫ですよ。こちらこそ申し訳ないです。子供の物が置かれたままで…。」
現在倫子の部屋は、子供のおもちゃやタンスが置かれていた。
兄と菜緒さんのリビングとして使われているらしい。
「平気、寧ろほっとする。美緒ちゃん可愛いし、癒される。」
「お休みの間、居たらいいのに。」
「平日でも来ようと思えばいつでも泊まりに来れるし、普段出来ない家事とかしないとね。ありがとう菜緒さん。」
「菜緒でいいですよ?年下だし。」
「だって年下に見えないもの。菜緒さんしっかりしてるし。」
「全然ですよ?子供出来た時もパニックで、どうしたらいいか逃げた位ですから…。」
言いながら菜緒は笑い、倫子の顔を見る。
「辛い時は逃げていいと思います。倫子さん、無理して笑ってる。」
「…そうかな?ねぇ、菜緒さん。好きになれそうな人が、本当に好きな人に気付かないで自分を好きだと言ったらどうしますか?」
突然の質問に、菜緒は手を組み悩ましい声を上げた。
「う〜ん、難しいですね?気付かないで好きだと言われるんですか?教えるか教えないまま返事をするかって事ですか?」
「うん、そうなるかな?」
「そうですね…私なら教えます。気付いてしまったら、相手もいつか気付く日が来ると思いながらお付き合いするのは辛いし。」
「そうだよね…。」
「そんなややこしい状況そうないでしょう?あるんですか?」
心配そうな顔の菜緒に訊き返されて、倫子は首を振った。
「ないよ。お休みなさい、菜緒さん。美味しいお料理沢山ありがとう。」
せっかく帰って来たのに結局眠れずに、朝が来るのを布団の中で待っていた。
心配されてしまうから、昼食を終えて直ぐにマンションに帰った。
食が進まない倫子を心配して、母がタッパーにおかずを入れて持たせてくれていた。
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