4828人が本棚に入れています
本棚に追加
/329ページ
休みが終わり、お弁当を作って朝食にゼリーを飲む。
テレビを消し、戸締りを点検していると鞄の中でスマホが音を鳴らしていた。
鞄を手に取り、玄関に向かいながらスマホを出して見た。
着信は新藤、ラインも新藤で、朝から2回目だった。
ーーー
「倫子、ちゃんと起きてる?仕事だよな?帰り会えないかな?駅で待ってる。」
ーーー
既読スルーでマナーモードにして鞄に入れて玄関を出た。
(大悟の時とは違う。裏切られた訳じゃない。最初から相手が違っただけ…一人で舞い上がっただけ…。)
「答え」が送られて来たらそれで終わり、割り切ればいいと考えて電車に乗り込んだ。
お盆明けの会社は忙しく発注書が多かった。
補佐の事務員だけでは捌けないほどで、部長も手伝って至急の物から補佐の垣根を越えて第一営業部全体で仕事を回した。
休み明けという事もあり、営業社員は全員、出入りが激しく出払っていて、沢木は朝出た切り、帰って来なかった。
「あ、それ私やります!」
挙手すると補佐の女性が笑顔を向けて近寄って来た。
「いいの?これ、本来は私の仕事なんだけど。」
「でも今日は帰りたいって朝も話してましたよね?今日はみんなで頑張ったし私は時間有りますから引き受けます。」
「ありがとう!助かる!あ、資料これ、宜しくね?」
「はい、お疲れ様でした。」
席に座り資料を見ながらカタカタ仕事をする。
(暫くは何も考えたくないし駅に新藤さんが待ってたら嫌だし、顔見たら多分、ブラック倫子が出てくる気がする。)
残業は寧ろ、今の倫子にはウエルカムだった。
(そう言えば…お昼、宇佐美さん変だったな?)
と考えながら思い返した。
お昼、書類が多い机で食事を諦めて、倫子は休憩スペースにお弁当を持って移動した。
いざ食べ始めると美味しくないと思い始め箸は自然に止まった。
どうやら自分はダメージを与えられると食事が喉を通らなくなる様だと自覚した。
これでは駄目だと思い、無理に半分を食べてお弁当の蓋を閉じた。そこに宇佐美が来て自販機から無糖の缶コーヒーを買い、前の席に座った。
「どうかしたの?あんまり美味しくなさそうに食べてたわね?失敗?」
「まぁ、そんなとこです。」
と答えてお弁当袋に仕舞った。
最初のコメントを投稿しよう!