考えて

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「何かあった?話ならいくらでも聞くよ?」 「何もないですよ?」 と答えて宇佐美の顔を見ると、すごく心配そうな顔で、「心配」と顔に書いてある様に見えた。 「……宇佐美さん?そんなに心配になる様な顔、してます?私。」 訊き返すと、うんと頷く。 「男って何だかんだ言ってさ、弱いのよ。昔好きだった人とか初恋の相手とかにはね?だからって好きとは違うから気にしない方がいいの。」 宇佐美は単刀直入に話すしスパンと要点を述べる。 本人は多分気付いてないかもしれないな、と思いながら宇佐美の言葉を倫子は頭の中で解釈する。 「……それは、昔の彼女や初恋の女性に頼まれたら会ったりしてるって事ですか?新藤さんが?」 「え?いや?そんな事ないよ?」 動きがおかしくなった宇佐美を笑いながら見て倫子は言う。 「気にしないで下さい。大丈夫です、何もないです。」 笑顔で言うと宇佐美もそう?と席を離れた。 その宇佐美の様子を見て、変だったな…と考えると、それは多分、新藤と中原沙織が会っている事を知ったか、聞いたか何だろうなと思った。 (あなたのご主人、浮気してますよーとか、教える人って親切心なのか揉めさせたいのか分からないものね?宇佐美さんは言わないよね。まぁ、ご主人じゃないけどね。) タンタン、とキーボードを打ちプリントする前に確認をする。 「よし!印刷、と!終わり!んーー頑張ったぁ!帰ろう。」 帰り支度しながら印刷を待ち、資料と揃えて担当事務の人の机の上に置いて付箋で一言添えておいた。 「あれ?花上?まだいたのか?8時過ぎてるぞ?」 「あ、沢木さんおかえりなさい。今日は仕方ないですよ。発注祭りでしたから。丁度終わって帰るとこです。」 自分の机に移動しながら返事をし、椅子に置いた鞄を持った。 「今から帰り?飲み行くか?」 「行きません!用事あるんで…お先に失礼します。お疲れ様でした。」 「そっか。倫也か?」 「内緒です。失礼します。」 笑顔を向けてニコニコしながらフロアを出た。 (作り笑顔疲れる……。) 廊下に出た途端、営業スマイルを元に戻していた。
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