考えて

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更衣室で暫くボーッとしながらスマホを弄っていた。 不動産屋からのメールは、今のところご希望のお部屋はありませんでした。で、仕方なく、いくつかの不動産屋を見つけて、同じ内容のメールを送った。 「家賃上限七万まで出来れば安い家賃希望。築年数は何年でも可。風呂、トイレ付き、場所は駅から遠くても可、ただしこの町名中心で会社まで電車と歩きで30分圏内希望。」 (まぁ、新藤さんがストーカー紛いの事をせずに、沙織さんの方にすんなり行けば引っ越す事はないんだけどねぇ。) 念の為に新しい部屋を捜していた。 別れて笑顔で会えるほど、強くない。 まだ尼にもなり切れてない。 (一年以内に二度の別れ、しかも取られるとか…男運なさすぎ。取られるは違うか?一度目の大悟は結局、付き合ってない訳だし、新藤さんは元々、向こうが本命、取られてはいないか…。) ふふっと笑い、泣いてる自分に気付く。 (あぁ〜もう。最近涙腺おかしいし、なんか怠い…やる気ないし、いや、仕事はやる気あるんだ、うん。集中出来るしバリバリ出来る。楽しいし。終わるとなんかなぁ…。) 更衣室の椅子に座ってダラーとしていた。 帰るのも面倒だなと思う自分がいた。 新藤倫也からは毎晩、同じ時間に電話があった。 取る事は一度もなかった。 マナーモードにしたまま、いつも「おやすみ」の声が入っていた。 いつ「別れよう」「終わりにしよう」の声が聴こえるか、ビクビクしながら再生をしていた。 八月は忙しいと話していたのは本当な様で、心配した待ち伏せはなかったが、何度か仕事何時に終わるか、駅で待ってるという内容のライン入っていた。 当然既読スルーして時間を潰してずらして帰った。 家では引き篭もりみたいな自堕落な人間、会社では仕事の早い仕事人間となった頃、その人は来た。
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