きっかけ

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「言いました、って言ったらそれが何ですか?」 「それがって……。私と倫也の邪魔して楽しいの?」 呆れた声で言われた。 「私に言われて会わなくなるならその程度なんじゃないですか?私も会ってないです。暫く会わないって伝えたので…。だから私は関係ありません。決めるのは新藤さんで私ではないので、新藤さんに直接言って下さい。失礼します。」 鞄をグッと握って言い、クルッと向きを変えた。 「倫子ちゃん?倫也とどうやって知り合ったかは知らないけど、倫也が付き纏ったって聞いたの。倫子ちゃんを見て、その中に昔の私を見たんだと思った。もう一度、やり直せると思ったわ。ごめんね?お願い、返して欲しい。」 (ごめんね?……返して欲しい?) 「新藤さんが、決める事です。」 そのままエントランスに入ってエレベーターのボタンを連打した。 (返して欲しい?返して?) 連打してエレベーターの扉が開く。 乗り込んで下を向いて唇を噛んだ。 部屋に入って鞄を放り投げて靴を強引に脱ぎ捨てた。 「返してって何?新藤倫也は物?あなたの物な訳?最初から私の何だから返して?はっ!!馬鹿馬鹿しい!」 立ったまま部屋の真ん中で言い、ガラス窓に映る自分の姿を見て窓に近寄る。 「醜い…みにくい、みにくい!最低!」 (こんな自分じゃなかった、こんな醜い顔してる。) 座り込んで泣いた。 光里にも沙織にも下に見られている気がした。 実際、そうなんだろうとは思ったけど、容姿も頭もきっとそうなんだろう。 だけど悔しくてもう嫌だと思ってしまった。 スマホを取りに鞄を拾いに行き、マスターに電話を掛けた。 ーーー 『はい。ブルーレインです。』 「マスター?倫子です。」 『お久しぶりです。そろそろご来店されますか?』 「教えて欲しいんです。」 『なんでしょうか?』 「新藤さんは…そこで中原沙織さんにどの程度会ってますか?」 電話の向こう側に沈黙が流れた。 『お客様の情報はお話ししない事になっております。』 駄目だろうな、と思いながらため息を吐いた。 「では、新藤さんが来る時は一人ですか?特にここ2ヶ月。その位はいいでしょう?」 『倫子さん。お答え出来ません。ご自身で聞いたらどうですか?今日は司に話があるとかでお見えですよ?』 電話を切ってからゆらりと部屋を出た。
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