誤解と別れ

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「俺と結婚する?」 司の言葉に足が止まり唖然とした。 したが、頭が良くない事を考えていた。 (司さんと結婚したら、光里さんも沙織さんも見返す事が出来る。だって「廉洞」だから…。そして親戚だから倫也さんにも時々は会える。顔が見れる、様子が分かる。) 停止したままそんな事を考えていると司が言う。 「光里さんにはひどい事されたんでしょ?見返してやれるよ?俺の妻に…廉洞の奥様になにも言えなくなる。それで倫也には会える。堂々とね?俺は好きな人と付き合えて奥さんはなにも言わない。お互いに利害関係の一致した良い結婚だと思うんだよね。」 考えている事を言われて、下を向き首を振った。 「そんな…思ったけど……そんな結婚、出来ない。」 泣き出した倫子を司が抱きしめた。 「倫子ちゃんはそう言うと思ったけどねー?想定内!泣きたいだけ泣いたら?」 役得、と呟く司の声を聞いて、遠慮なく腕の中で泣いた。 少ししてから泣き止んで、ありがとう…と腕の中から離れた瞬間、後ろから声が聞こえた。 「倫子?……司。二人は……いつのまに?いつから?」 愕然とした倫也の姿があった。 誤解されているとは直ぐに気付いた。 「倫也、これは…「ごめんなさい!!」 誤解を解こうとした司の声を倫子が大きな声で被せた。 司の腕をぎゅっと握ったまま、横向きで顔だけを倫也に向けて言う。 「ごめんなさい。倫也さんが沙織さんと会ってると知ってから、司さんに相談しててこうなった。」 「…付き合ってるって事か?」 「ごめんなさい。」 「倫子?嘘だよな?」 近付こうと足を踏み出した倫也を見て倫子が言う。 「女を追い掛ける人じゃないよね?」 その言葉で倫也の足は止まり、絶望と失望の表情で向きを変えた。 「ちょ…倫也!倫子ちゃん?」 去って行く倫也を呼び止めようとしたが、倫子が腕を掴んでいて司は動けずに倫子の顔を覗く。 泣いている顔にどうしてと訊き返した。 「倫子ちゃん?結婚、断った癖に…何で?」 「倫也さん…私が好きな訳じゃない。まだ…沙織さんが好き。ううん、ずっと好き。」 泣きながら、涙を止めようとしながら倫子が言う。 「何で?倫子ちゃんが好きだよ?」 司の言葉に首を振った。 「あれって…会った時思ったの。だから…実家に戻って写真、探した。父にも聞いた。疎遠だから…お互い、意識してないけど…沙織さん、山本…沙織。旧姓が山本なの。父の父の姉の嫁ぎ先の名前、山本だった。初めてあった時に言われて父に聞いた。祖父の姉のお子さんのお子さんだった。」 「えっ!?」 真剣に司が驚くと倫子は続けた。 「はとこだか、なんて言うかは知らないけど…血は繋がってる。遠いけど繋がってる。私でも司さんや理也さん、全然似てないのに倫也さんを感じる事はあった。従兄弟だからかなぁなんて思ってた。今、思い返してみたら……最初からなんでかなって言ってた。どこか似てたからよ…。最初から私が好きな訳じゃない。沙織さんを見てたの。」 泣き崩れる倫子を司はまた抱きしめていた。
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