誤解と別れ

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翌日、司から聞いたのか、新藤から聞いたのかは知らないが、沢木に昼休憩に拉致された。 「倫也と別れたってどういう事?」 ランチは奢ってくれるというが、その代償に話せというのはあんまりだと思い、無言になった。 「上手く言ってただろ?何で?彼氏がまた来たのか?」 そう聞かれて、司の事は耳に入ってないと察した。 「別に、大悟は関係ないですし、最初からお試しのお付き合いみたいな感じだったじゃないですか?ゆっくり?彼氏にして欲しい、みたいな?」 サンドイッチを口に、誤魔化しながら話した。 「お試しのお付き合いなら尚更!別れる必要あるか?」 「新藤さんは三十歳でしょう?お試しに時間を掛けさせたら悪いなぁと思ったんです。これ以上好きになれそうもないですしね?」 (これ以上、好きになれる訳がない。嘘じゃない。) 「じゃあ、俺は?お試し恋愛。」 「直ぐ別れそうですね?」 「迷いとか動揺もなしかよ。ちょっと前まで動揺しまくりだった癖に…。」 「成長ですかね?沢木さんを好きになったら良いんだろうなって思った事もあるんですよ?でも、沢木さん鬼だし、口悪いし、足臭いし…。」 「おい、臭くない!」 くすくす笑いながら、倫子は沢木に笑顔を向けた。 「ご心配をお掛けして。大丈夫です。仕事、頑張ります。沢木さんに認めて頂ける様に。もうこの話は辞めにして下さい。あの店にも二度と行かないし、司さんにも会う事はないと思います。勿論、新藤さんにも。会社の後輩としてよろしくお願いします。」 さっぱりとした顔で話す倫子に、沢木も納得の返事をした。 男女の事で口を挟んでも仕方がないと思ったからだった。 だけど、昼食を終えて店を出る時、倫子が頼んだサンドイッチはひとつしか減っていなかった。 店の人に頼んで包んでもらい、 「後でも腹が減ったら食えよ?」 と、倫子に渡した。 話の内容が内容だけに、食べる気分ではなかったのだろうと考えていた。
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