誤解と別れ

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新藤と別れて一か月が経ち、八月も終わり、9月の半ばになった。 一年が経った沢木との仕事は、沢木のスピードにも付いて行ける様になり、最近は沢木からの指示に駄目出し出来る様になって来ていた。 怖さも半減したかもしれない。 「花上ー。これ、昼過ぎ、間に合うか?」 書類を渡されて見る。 パソコンデータの中身をスクロールさせて画面を出す。 「これですよね?」 「お?何でもう出来てる?」 画面を覗き込みながら、沢木は不思議顔を倫子に向けた。 「発注書書いた時に、その発注書で取り付け工事した時の見積もりを作っておきました。概算ですから、細かいところだけ見直して打ち直せば直ぐ出せます。三十分も頂ければ。」 「おおー。使える様になったな?スローロリス?」 頭をくしゃっとされて、手をパシンと叩いた。 「それより、この提案書、おかしいですからね?キッチンのモデルルームでこのドア、玄関ドアですよ。キッチンに玄関ドア付けます?そういう人もいるかもしれないですけど…本当にいいんですか?」 ジーッと沢木の顔を見ると、直ぐ訂正する!と慌てて椅子に座った。 「駄目ですねぇ、最近浮かれてるんじゃないですかぁ?宇佐美さん、綺麗になりましたよねぇ?」 「な!花上!!」 「あ、急いだ方がいいですよぉ?宇佐美さん今日は外でランチなのでぇ。」 にやにや笑いながら、少し前の沢木と同じ様に揶揄うと、覚えてろと言いながら必死で仕事をしていた。 最近、宇佐美と食事の回数が沢木は増えていた。 多分、いい感じなんだと思う。 そして倫子は、仕事を終えるとコンビニに寄って、週に一度はスーパーに寄ってマンションに帰る。 夕食はお茶漬けか雑炊、もしくは何か摘みだけで、お酒を飲む。 一人で晩酌する。 この一か月の決まりだ。 会社が休みの日はどこにも出ずに自堕落な生活をする。 考え始めると思い出すから、思い出すと辛いから、何も考えずに眠れる様にお酒を飲む。 引っ越さずに済んだ事が、今の倫子には救いだ。
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