誤解と別れ

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日曜日、今日も朝からだらけた生活を送っている。 郵便が届いて、手紙なんて珍しいと思いながら、ドアポストから引き出した。 差し出し名は、「伊川灯里」。 直ぐに開けながら、クッションを背に壁に持たれて座り、目を通した。 ーーー 倫子、変わりなくお元気ですか?     (うん、元気。) 大学は就活が厳しくなって来て、毎日が大変です。 売り手市場と言われているからもっと楽かと考えていましたが、行きたい会社と求められる会社は違います。何がしたいか、どこで妥協するか、ままならないと実感しています。    (うん。) あの日、倫子に言われた事。 倫子が一生懸命考えて出してくれた答えを、私もまた倫子の気持ちになって考えました。母や姉の様にはなりたくないから。 倫子に酷い事をしました。 同じ事をされたら、彼氏とは別れて倫子を責めて、でも許すと思う。好きだから。だけどどうして話してくれなかったの、そうなる前にと、言ったと思う。 好きでもないのに興味だけで、流れでそうなった。 倫子が許せないのは当然だと思いました。 大悟とは、もう本当に何もない。 ただね?時々会って話はしています。 殆ど、高校時代の懐かしい思い出話だけど、笑い合ってまた頑張ろうと思えるから。それはいいよね?    (いいと思います。パワー充電だね。) いつか、いつかどこかで会ったら、久し振り、元気?ってごめんねって言える様にそんな風になれる様に、倫子に会える様に頑張ろうと思います。 一人でちゃんと立って、前を向いて歩いて行こうと思います。   (うん、そうなるといいね。) 倫子、今でも倫子は一番の友達です。 そう思う事だけは許して下さい。 倫子の幸せを祈っています。        伊川灯里 ーーーーー 「いつか、笑顔で会えたらいいね。私も灯里の幸せを祈っています。」 呟いて倫子は手紙を封筒に戻して抱きしめた。
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