大人になるって

1/5
前へ
/329ページ
次へ

大人になるって

9月も終わりに差し掛かり、変わらない毎日を倫子は過ごしていた。 宇佐美も沢木も部長も倫子の変化には気付いていて、それぞれに心配をしていた。 新藤とお付き合いを始めた頃には、多少なりとも身綺麗になっていたが、会社に来る服装もどうせ着替えるしと、ラフな感じで来る事が増え、日に日に痩せて行っている気がしていた。 「なぁ、どう思う?」 「どうも何も、失恋による(やつ)れにしか見えないわよ。」 あの野郎、と宇佐美は言い、ハンバーグを刺した。 「おいおい、こえぇよ!花上に振られたって倫也は言ってたぞ?」 沢木が同じくハンバーグランチを食べながら言う。 「司さんは新藤さんが忘れられずにいた、前の彼女と縒りを戻す様な事言ってたわよ?ずっと忘れられないでいたんでしょ?」 「え?人妻じゃんか!」 「離婚の話が進められているそうよ?正式に決まれば半年後には結婚出来る訳だし、半年間は丁度いい交際期間になるじゃない。」 「倫也はそんな事言ってなかったけどな?」 納得のいかない顔をして、沢木は難しい顔で悩んだ。 「見た?花上の目の下の隈!化粧で隠してるけど、隠しきれないってもっとすごいって事よ?寝てない、食べてない。これじゃあ去年のあのバカ彼氏の時と同じじゃない。花上が振ったならそんな風になる?」 「もう一度、倫也と司の双方に聞いてみるわ。」 ため息を吐いて宇佐美に食え、と沢木は言いながら微笑んでいた。
/329ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4890人が本棚に入れています
本棚に追加