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「ただいまー。」
「おかえりなさい。」
昼食に外へ出てそのまま午後の営業に行き、16時に戻った沢木は、隣の倫子に書類を渡し、声を掛けた。
「それ明日の昼まででいいからな?今日はもう出ないから、あ…宇佐美は、あれ?午後営業ないはずなのに…。」
フロアを見回して言う。
「あれ?会いたいです?」
にやにやした疲れた顔の倫子に言われて、頭をパンと叩こうとした手を止めた。
「違うわ!打ち合わせあるんだよ。午後いるって聞いてたんだけどな。」
「ミーティングルームです。ちょっと問題あったみたいです。」
倫子は並んでいるミーティングルームの一つに目を向けて話した。
「そっか。まぁ、仕事なら大丈夫だろ?」
「人間関係ですよ?宇佐美さん女性上司で軽く見られてるんです。28で主任、26の男性社員から見たら…主任でも下に見られるんですよ。ひどいです。あんなに頑張ってる人に…。」
自分の事の様に倫子はミーティングルームを見つめて唇を噛んでいた。
「大丈夫、あいつ強いし?26の男性社員?誰だ?第二にウサギを下に見る奴いないだろ?」
呆れた顔を沢木に向けて、倫子は答えた。
「9月になってから異動して来たでしょう?彼の指導担当になっているんです。上からかなり期待された人材だとかで扱いに困ると宇佐美さん言ってました。」
「聞いてないけど?」
「沢木さんも忙しいの知ってて言わないと思いますよ?仕事の事だし、宇佐美さん一人で抱え込んでしまうから。大事ならそういうとこ、フォローしてあげて下さいね?好きな人には言わないんです!女性は!」
女心が分からないんですねぇ、と話す倫子にお前もか?と聞きたい言葉を飲み込んだ。
「ちょっと行ってくる。次いでにミーティングしたい。あんまり心配するなよ。」
沢木はそう言い、宇佐美のいるミーティングルームの扉を叩いた。
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