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ミーティングルームのドアを開けると、踏ん反り帰る宇佐美と下を向く男性社員の姿。
(反論したがやり込められたか…。)
と状況を把握し、宇佐美に声を掛ける。
「終わったらいいかな?ミーティングお願いしたいんだが?」
「ん?……あぁ、はい。いいですよ。10分程度ならお時間取れます。」
最初は意味不明の表情を見せた宇佐美も、直ぐに納得の顔をして返答した。
「仕事戻って?何か不満があるなら担当変更を部長に言って下さいね。」
「失礼します。」
一礼して男性社員は部屋を出て行き、パタンとドアが閉まると宇佐美は大きくため息を吐いた。
「なんだよ?何があった?随分、凹んでなかったか?」
さっきまで男性社員が座っていた椅子に沢木は座る。
「いちいち反発するのよ。資料集め頼んでも、手土産頼んでも書類作成頼んでもね?彼、材質輸入部からの異動でね?第二営業部の扱う小さな商品が気に入らないみたいで、単価が安いと馬鹿にするし、いい加減耐えかねてね、厳重注意。これでも納得出来ないなら担当者替えでも主任クレームでも好きにしてって話たとこ。」
「主任クレームは駄目だろ?査定響くし降格もあるぞ?」
宇佐美の言葉に心配して聞く。
「構わないわよ?この程度で降格される仕事はしてないし、されたとしても一年以内に戻ってみせるわ。ていうか…戻すわ、会社が。」
「相変わらず清々しい程の自信だな。」
「女が会社でそれなりのポジションにいるとね、自分を信じないとどうしようもないのよ。で?沢木、花上の事じゃないの?」
足を組み替えて、前の時みたいに机をタンタンと叩いて宇佐美は催促した。
「あぁ、そうだった。倫也と司に聞いた。倫也は花上と司が自分の知らない間に付き合ってたって。花上にそう言われたらしい。だから別れるって言われたんだろうなって解釈してた。それから司にも連絡してないって。顔見たら殴りそうだしって。」
「はぁ?司さんと?」
宇佐美も驚いて訊き返す。
「司に聞いたら、付き合ってない。倫也にはそういう事にした。泣いてる間抱きしめてたら倫也が来て、花上が誤解を認めたらしい。実は付き合ってたんですよ?みたいなな?」
「はぁ?花上…何でそんな面倒な事を……。」
はぁ〜とため息を吐いて、宇佐美は頭を抱えた。
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