忘れよう

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忘れよう

有休を取り、買い物に出掛けて倫子は暑さにバテた。 部屋に戻りエアコンを急ぎで付けると、冷蔵庫に行き、缶チューハイを飲んだ。 「ぷはっ!生き返る!!昼間からの酒、贅沢だ。あぁ〜もうあっつい!!9月だっていうのにぃ…。」 仕事以外は自堕落…暫くはまともな食事はしていない。 食べてない訳ではない。 朝はゼリーか栄養補助食品、昼はお弁当を作って持っていく。 食べるのは半分くらい。 夜は簡単におかずを作るか、昼のおにぎりを食べるか、缶チューハイ片手に摘む。 「すっかり呑んべいですよぉ…。」 サキイカを手に床の上に缶チューハイを置いて、テレビのリモコンを押した。 有休で買い物に出たが、暑くて早々に戻って来た。 大きな乗り換え駅のデパートまで行き、目的の物は買えたのでまぁいいだろうと帰宅した。 投げつけた所為で壊れた携帯は新しい物にして、大悟や灯里にも番号が知られた事もあり、新しく契約し直した。 司とももう連絡は取れない。 沢木には教えてあるが、仕事以外で連絡をしてくる事はないし、沢木が女性の携帯電話を勝手に教える人だとも思わない。 ーー『次のニュースです。一部上場企業のアクオソリューションが、廉洞コーポレーションのIT部門と提携する事がこの度、発表されました。発表会見と契約提携会見を行いました。』 テレビから聞こえた言葉に音を大きくしてテレビの前に座った。 握手をする男性同士の横の後ろに小さく見える新藤の姿。 「新藤さんだ……。」 思わず口元に手を当てて泣いてしまう。 僅か、一か月ほど前の事、そんなに長く離れている訳ではないのに、何年も会っていない気持ちになっていた。 「良かった…元気そう。お仕事も順調なんですね。おめでとうございます。」 呟いて、反対側の男性の見えるか見えないかの位置。 テレビ画面に見切れそうな場所にその女性の姿を見つける。 「沙織さん……一緒に仕事してるんだ。まぁ、そうか、結婚するんだもんね?」 テレビを消してその場に寝転んだ。 飲んでは寝て、起きて仕事して、帰って飲んでまた寝る。 (何してるのかなぁ…私は…。大人になるんじゃないの?) 涙がどんどん出て来た。 情けなくて自分が嫌いだった。
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