忘れよう

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実家のお夕飯に招待されていたので、シャワーを浴びて酒臭さを取り、着替えて綺麗にメイクもして、夕方、部屋を出た。 痩せていく娘を心配した母が、週に一度、必ずお夕飯に招待してくれていた。 今回で三度目になる。 因みにほぼ強制だ。 実家に行く途中、また同じニュースを見かける。 駅前のお店で道路側に向けて大型テレビが流れていた。 背中を向けて駅に急いだ。 「こんばんはぁ?」 「倫子さん、いらっしゃい。」 菜緒に笑顔で迎えられて、リビングに行くと珍しく父がいた。 「平日だけど?」 思わず呟いた。 「たまたま有休だったんだ。」 と言われてふぅん、とソファに座る。 「もうすぐ出来るからねぇ。菜緒ちゃん、道治呼んで。」 「はぁい」 と、菜緒が階段を上がって行く。 「は?平日の6時にお兄ちゃんもいるの?智徳だってまだ帰ってないんでしょ?学生より暇ってどうゆう事よ!」 この前お邪魔した時は父も兄も仕事で不在、智徳も6時半頃に帰宅だった。 後ろから頭にチョップを受ける。 「俺も有休!有休消化は与えられた権利だ!」 と、兄の道治が言い、ダイニングテーブルに座った。 その腕に愛娘が抱かれていた。 食事を終えて、美緒を抱く菜緒の隣に座り、ソファでくつろいでいた。 美緒の可愛さにメロメロになりながら、癒されるー!を連呼して頬をプニプニ触り、手や足をプニプニ触る。 「もう、めっちゃ可愛い!食べちゃいたい!んー美緒ちゃん好き!」 「食うな!やらんし、そんなにいいなら自分で産め!」 「お兄ちゃんセクハラ!」 「彼氏出来たんだろ?」 その言葉に固まる。 そこについては曖昧だった事もあり家族には何も言っていなかった。 (……何故この兄が?) という目を向ける。 「うわぁ〜図星の目ぇ〜。」 と言われて固まった。 「伊達に兄妹やってないしな?見てたら分かる。お前は真面目で素直な分、すぐ顔に出る。アホだな?」 とゲラゲラ笑われた。 父は変わらず無言で静かにやりとりを聞いている様だった。 (いずらい……帰ろうかな。) 「帰ろうかな…そろそろ。明日も仕事だし?」 中腰になりソファから立ち上がろうとして、テレビがあのニュースを流し始めた。 停止してポスンと元の位置に腰を落とした。 ニュースは倫子が消した場面から先を流していた。
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