忘れよう

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ーーー『業務提携を行うアクオソリューションと廉洞コーポレーションのIT部門ではお互いに弱い部分を補いつつ強化出来るはずだとコメントをしていて、本日、アクオソリューションの新しい社屋内で発表後のパーティーが開かれる予定で今後の協力体制に周囲の期待も大きい様です。』 移し出される映像に、新藤と沙織の姿を見る。 端っこの遠くの方…小さいけど倫子が新藤を見間違えるはずはなかった。 (分かってた。分かってる。間違いの相手だった。分かってる。) それでも遠くでも小さくても、一緒の二人を見たら涙が溢れた。 (好きだった。好きだった…いつの間にか本気で…好きだったんだ。) 耐えられずに両親の部屋に走って行き、ドアを閉めて泣き出した。 「倫子さん?」 「おい、倫子?」 走って奥の部屋に入っていった倫子の様子を見て、道治はテレビに視線を戻してから菜緒の前に手を差し出した。 「菜緒、スマホある?」 「えっ!あるけど…。」 「貸して、俺置いて来た部屋に。」 エプロンのポケットからスマホを出すと、道治に渡す。 「今のニュース…アクオ…ソリューション…廉洞コーポレーション…これだな。」 呟きながら検索し、画像を出して凝視していた。 道治は画面を見ながら両親の部屋に移動する。 「おい、倫子!入るぞ!」 声と同時に襖を開けた。 「入るな!」 「うぉ!座布団投げるなよ。ここ、父さんと母さんの部屋な?そこに籠るとかどんだけだ?これだろ?号泣の原因。」 膝を折り座った道治はスマホを倫子の顔の前に出した。 無言で倫子は首を振る。 兄になどバレてたまるか、という意地があった。
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