忘れよう

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そんな倫子の気持ちを見透かす様に、道治はスマホ画面を横から覗く。 「さっきのニュースな?まぁ、これ写真だけどさ。廉洞コーポレーションもアクオソリューションもお前には無関係な会社だよな?でさ、万が一、知り合いがいたとしてな?これはないだろ?おじさん、明らかな60オーバー。これで泣いてたら兄ちゃん、何を想像していいか分かんないわ。」 「想像すんな!」 ボスッと腕を叩いた。 「でさ?この後ろな?こっちは男二人。あとホテル系?デリバリーかなんかかなぁ?有りちゃありだけど、男が働いてて泣くかっつー話になるよな?ヒモなら有りだけどさ、その場合嬉し涙で、今のお前は明らかな悲しい涙な?そうなるとだな…。」 話しながら道治はスマホ画面を指で拡大する。 「遠いけどこっちだよな?スーツのキャリアウーマンに同じくスーツの男性。顔はよく分からないが、美男美女に見える。」 「う、っさい!美男じゃないわ!!」 泣きながら睨んで言い、スマホを叩き落とそうとして、サッと避けられた。 「あぶっ!お前、分かり易いなぁ?しかも今、何しようとした?これ菜緒のスマホだぞ?壊したら俺が怒られるんだぞ。ガチだぞ!あいつ怒るとムチャ怖いからな?」 「うっさい。お兄ちゃん!ハゲろ!」 「出たよ…。喧嘩すると直ぐ言うんだよな?呪い的命令形の悪口。まぁ、久し振りだし懐かしいから答えてあげよう。……こほん。」 小さく咳をして、道治は倫子の顔を覗く。 息を吸って、大きめの声で言う。 「ハゲない!!」 子供の頃と同じ返答をされて、倫子は泣きながら兄を叩いた。 言い方や言う時の顔がなんとも憎たらしいのだ。 「あぁ、もう悪かったよ。泣き止め。そんで教えろ。これ誰?」 もう一度スマホを前に持ってこられた。 ヒックとしゃくり上げながら、落ち着こうと泣き止もうと倫子も頑張ってみる。 「それ、沙織さん。」 「沙織さん?だれ?友達?」 ブンブン首を振り、絞り出して言う。 「山本沙織ぃ〜。し、親戚の…最近、気付いたけどぉ〜。」 「えっ?さおちゃん?山本伯父さんとこの?マジか?へぇ、懐かしいなぁ。」 と道治はスマホ画面をまじまじと見た。 「で?こっちは?」 指を当てて聞かれて、小さな声で答える。 この時の倫子の心はすっかり小学生辺りにタイムスリップしていた。 「し、新藤さん。沙織さんの彼氏…でも、ちょっと前まで私の…私の彼氏だった。一応、だけどぉ〜、だけど、待ってるって倫子って……。」 一気に泣き出していた。
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