ハッピーエンドは嫌いだから

　　　
「これは絶対に秘密なんだけど……。実は俺、恋愛小説のハッピーエンドってやつが嫌いでね」
　ついつい俺がそんな本音を漏らしてしまったのは、それだけ酒が入っていた証(あかし)だったに違いない。

　口にするや否や、自分でも「しまった！」と後悔するけれど、もう遅かった。
　俺の言葉を耳にして、隣の女性Sさんが、酷く表情を曇らせたのだ。
　せっかくの美貌が、少し崩れるほどに。